WEB本の雑誌

10月3日(木)

 今日訪問したとある書店のとある書店員さんは、先頃出た辞令によって、長年所属していた売場勤務を外れることになってしまった。今後は内部で本とはまったく違う事業に携わるとのことで、本が好きでこの業界に入った人間にとって、これほど悲しい宣告もないだろう。

 それも決して現在の売場の売上が上がらないためによる異動ではなく、この不況下のなか様々な試みを積み重ね、これからという時だっただけに、本人の悔しさが言葉の端々に窺える。こちらから見ても不可解の人事でしかないのだが、それがきっと組織というものなのだろう。

 人事異動というものが、いまいちわからない。もちろん本の雑誌社のようなチビ会社には、その異動すらないので体験したことがないのがわからない一番の原因なのだろうが、営業マンとして書店さんの異動を観察している限り、それはどうも適材適所とはまったく違う方向に向かっているように思えることが少なくない。涙を流しながら売場を離れていった人を僕は何人も知っているし、異動後のその売場から活気や熱意が消えていく様も体感している。良い人事と感じることは意外と少ないものだ。

 書店さんとはいえ、それなりの組織になれば、きっと僕がテレビや小説でしか見たことのない派閥争いや出世競争もあるのだろう。そんななかで駒のように人が動かされ、本人の熱意や希望はかき消されていくのだ。納得できない人事を前に、部外者である僕も非常にやるせない気持ちになってしまうが、このやるせなさはぶつけるところがないから始末に悪い。

 その書店員さんは「もう売場に戻ることはないかもしれないですね」と自分が手がけた棚や1日1冊書き続けたポップを見つめながら呟いていた。

 あと数日で、売場を愛し、お客さんに本を届けることを何よりも幸せに感じていたひとりの書店員さんが姿を消す。