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10月4日(金)

 昨夜、帰宅途中、子分ダボから連絡があり、急きょ昔の仲間で集まることになった。小学校・中学校の同窓生、いわば僕の部屋にたむろしていた連中で、指折り数えてみると、どいつもこいつも20年近いつき合いになっているのには驚いてしまった。一人なんて小学校1年からのつき合いだからすでに24年、四半世紀も遊んでいる。腐れ縁とは恐ろしいものだ。

 集まった本来の目的は、連絡してきたそのダボの結婚式と二次会の打ち合わせだったのだが、集まってしまえば誰もがそんなお題目を忘れ、昔話とばか話に花を咲かせるだけ。結局何も決まらず大騒ぎをしているうちに夜が更ける。

 それにしても昔の仲間と会うのは何て気楽なことなんだろう。顔を合わせ、「オウ!元気かぁ?」なんて話をしていると、社会人になってから強硬に作り上げた心の中の壁がガタガタと崩れ落ちていく。ここでは誰もが僕のことを「杉江さん」や「杉江君」などと呼ばず、名前から取った愛称「ツグ」と呼ぶ。そう呼ばれることの喜びをしんみり感じつつ、僕も逆に「みっちゃん」「しゅうちゃん」「うーまん」などと昔のまま呼び返す。

 30歳過ぎの男が集まって「ちゃんづけ」もないだろうが、これ以外呼び方を知らないのだからどうしようもないし、今更他の呼び方も無理がある。ふっと気になって仕事の話を聞いてみると、みんなそれぞれちょっとづつ偉くなっているようで、会社ではしっかりした呼び名があるようだ。まあ、そんなものをかなぐり捨てられるのが、こういう仲間達と集まる良さなのだから関係ない。

 もっと酔いがまわると、名前を呼ぶのも煩わしくなり、「バカ」とか「デブ」とか「チビ」なんてそのままずばりの呼び方になっていくが、誰もそんなことで怒りはしない。

 いい気分で酔っぱらい、そろそろ2件目の飲み屋に向かおうかとした矢先、仲間のひとりが思い出したように声を上げた。

「あのさ、塾へ行こうぜ! オレ達が行っていた塾へさ」

 その言葉を聞くまですっかり忘れていたが、今日集まった仲間達は学校だけのつき合いでは物足りなかったのか、みんな同じ塾に通っていたのだ。もちろん勉強なんてどうでもよくて、塾を口実に夜遊びするのが目的だった。

「少子化で潰れてるよ、絶対ないね」
「そうそう、あるわけないよ、あんなちっこい塾が」

 僕を含め地元を離れた仲間達は、それぞれ勝手なことを口走ったが、そのまま残って酒屋を継いでいるダボがつい最近、その塾の塾長と車ですれ違ったと反論する。

 酒の勢いと、郊外の小さな町では大した飲み屋があるわけでもなく、行き場をなくしていた僕たちは、とにかく塾へ向かうことにした。そしてその塾はそのままそこに存在し、10数年ぶりに塾長と再会することになった。

 しかしその後のことは完全にナチュラルハイ化してしまっていたため、僕はほとんど覚えていない。昔から一番モテていたみっちゃんが、授業の終わった女子中学生とメールアドレスを交換していたのと、信用金庫に勤めているしゅうちゃんが塾長にバランスシートを出せと騒いでいるのが、薄ぼんやりとした記憶の中に漂っているだけだ。