10月10日(木)
ワールドカップ不況が一段落ついたかと思ったら、今度はどうも出版業界にハリーポッター不況が吹き荒れそうな雰囲気になってきた。ここ数日どこの書店さんを訪問しても、間もなく納品になるハリーポッター4巻のストック場所確保に大わらわなのだ。ドカドカ返品を作っている現場を前に思わず呆然と立ちつくしてしまうほど。
それは返品だけでなく、同時期に発売になる本の注文数にも影響が出ているようで、通常なら100冊取るような新刊も在庫の置き場がないため50冊に控えてしまったり、ワゴンや平台の多くがハリーポッターに占領されるなど、出版社にとっては悲鳴を上げたくなるような苦しい展開が続きそう。書店さんは多分10月の売上がハリーポッターによって上がるだろうが、静山社以外の出版社は大きくマイナスになるのではないかと不安を感じている今日このごろ。
そんななか我が本の雑誌社はあまりに暢気ですっかりハリーポッターの発売日を忘れていて、顧問目黒の新刊『だからどうしたというわけではないが。』を、まったく同時期に発売するという過ちを犯してしまう。頭を抱えて単行本編集の金子にスケジュールの変更を願い出たが「ハリーの読者と目黒さんの読者が重なると思っているの?」としごく真っ当なことを言われあっけなく却下されてしまった。そういうことを僕が言っているんじゃないんだけど…。
それにしてもハリー旋風は尋常じゃない。ある書店さんでは正真正銘の客注だけで、1000部を越えているというし、本日訪問した菊名のP書店さんで店長のHさんと話していると、たった20分間で3人ものお客さんが「まだだっけ?」と問い合わせにやって来るではないか。出版流通としても限界を越えているようで、製本所だかシュリンク工場だかから直接配本に向かわせるという噂を聞いている。
ウロウロ書店さんを廻っている僕はそんなハリー旋風のなかであることに気づいた。それは客注の予約数にかなりお店ごとに差があるということで、それがどうも通常の状況と違うのだ。通常予約というものは、売上やお店の規模というものに比例してあがるものなのだが、今回は郊外の住宅地ほど予約数が上がっている。
完全なドーナツ化現象が起きていて、これはきっとあの厚さで上下巻というボリュームから来ているのではないか。そうなると都心部の大型店は意外と苦戦するのではないか。うーん、果たして結末はいかに…である。
このようなハリー旋風を前にすると、思わず野次馬根性的にいろんなことが頭の中を駆け回ってしまう。
ひとつは、これだけの売れ筋本を一方的な取り決めで「買い切り」「完全シュリンク」という前代未聞の方法を採ったのであるなら、いっそ「再販」も外して「正味」もいじり、勝負して欲しかったということ。そこまですれば、ある意味書店さんとイーブンな取引になり、それでどうなるかが、瀕死の出版業界にとって新たなモデルを指し示せす良い材料になったのではないかと思うのだ。
もうひとつ。僕の廻り(本の雑誌社社員や助っ人)は誰もハリーポッターを読んでいない。しかし毎月本を10冊以上は買っていて、10月末も同様に本を買うだろう。となるとここでの品揃えがしっかりしていないと通常の売上をダウンさせる可能性が書店さんにあるということ。本日訪問した横浜のM書店Yさんの素晴らしい一言が蘇る。
「『ハリーポッター』の売上はボーナスと考えて、いつも通りしっかり売らないとこの売上はまるで意味がない」