11月13日(水)
久しぶりに明るい話題が飛び込む。書店さんの新規オープンだ。それもナショナルチェーンの出店ではなく、完全な独立店舗。小さな書店さんの閉店の報ばかり伝わってくる昨今、これほど嬉しいことはない。
護国寺の駅を降り、講談社の目の前に面したまだ真新しいマンションの1階にその書店さんはオープンした。ブックス音羽。S店長さんは、元々こちらの世界で名の通った書店員さんで、かつて別の書店に勤めていたとき、僕はとてもお世話になっていた。その縁もあり、『本の雑誌』の注文を頂き、直納へ向かった。
「今、ないでしょう、小さい店開ける人。みんなオープンは大きい店で、珍しいって取次店でも言われたよ。難しいのはわかっているけど、でもやっぱり本屋をやりたいし、いつか自分の店をって、ずーっと考えていたんだよね。25坪の小さい店だけど。まぁ、これからだね」
S店長さんはオーナーになった喜びと、またその分大きな責任を背負い、何だか不思議な笑顔で話してくれた。ここへ辿り着くまでの道のりは、僕にはとても乗り越えられない険しさだし、またこれから向かう先も決して楽な道ではないだろう。けれど、S店長さんが浮かべている笑顔、僕もいつかそんな表情を浮かべられるような人生を歩みたい。
「休みがね、ないんだよ。とにかく今のところ無休で開けていて、店が開いている限り、例え自分が休んでも休めないんだよね」
今後の成功を心から祈り、そして「体調には気をつけてくださいね」と声をかけS店長さんと別れた。
地下鉄の出入り口に降りる前にもう一度振り返る。
講談社の大きな大きな建物と、25坪のお店。何となく出版界の象徴のようなその光景に、しばらく見入ってしまった。