11月14日(木)
出かけるタイミングが、調べものに行く助っ人学生と一緒になり、肩を並べて笹塚駅へ向かった。
ケラケラ笑う元気印の新・タカ(タカハシミホという同姓同名の学生がいるので、後から入ってきたタカハシミホは必然的にこう呼ばれるようになった。ちなみに元々いたほうのタカハシミホは旧・タカと呼ばれている)とのんびりした口調が特徴的なコンドー。二人とも女子学生。
閑散とした午後の商店街を歩いていると突然思いだしたようにコンドーが話し出す。
「この前、調べもので図書館に行ったとき、突然<おっさん>が寄ってきて話しかけてきたんですよ」
「えっ?」
「すごい怪しくて、何を調べているんだ?とかそういうのが好きなのか?とかしつこいんですよ」
「それで、大丈夫だったの?」
「ええ、でもちょっと気持ち悪くて。余計なこと話すの面倒だから、大学のレポートって答えたんですけど、ずーっとつきまとわれました。あの<おっさん>何だったんでしょうかね」
僕には重松清の小説に出てくるような寂しい中年が思い浮かび、つい意志疎通ができない自分の娘とコンドーをダブらせ、話しかけてきたのだろうと考えた。
「寂しそうな<おっさん>だった?」
「うーん…。30代半ばくらいの普通の<おっさん>だったんですよ」
オイ!!、ちょっと待て! 30過ぎを形容するのに<おっさん>という言葉を使うなら、オレも<おっさん>じゃないか? 確かに<おっさん>だけれど、それは小学生や中学生から見たら<おっさん>で、君たち20代前半からみたら、<お兄さん>程度の認識じゃないのか? だって年だって10歳も違わないんだぜ。
しかしそのことは口に出さなかった。あまりにビックリしてしまって声にならなかったのと、ツッコミを入れたら自分が<おっさん>扱いされたことを白状することになるからだ。ここはひとつ話を流してしまおうと、違う話題を振ろうとした瞬間、新・タカがお得意のケラケラ笑いをして、とびきりのツッコミを入れた。
「コンドーちゃん、ダメだよ、30半ばを<おっさん>って言っちゃ。杉江さん、ドンピシャなんだから、傷つくよ! ほら真顔で焦ってるよ。ケラケラケラ」
その後、何度も何度もコンドーは謝りつつ、フォーローを入れてくる。「杉江さんはおっさんじゃないです」と。しかし、その言葉を繰り返されれば繰り返されるほど、あまりにこちらは惨めな気持ちになっていく。