WEB本の雑誌

3月3日(月)

 単行本編集の金子と僕にはまったく共通項がない。共通項どころか、まるで正反対の人間で、金子の発言にはいつも驚かされてばかり。読んでいる本も、たまに無理矢理読ませた本の感想もまるで逆で、これはとても手に負えない。

 たぶん学校で出会っていたらお互い口も聞かない仲になっていただろう。それはきっとケンカにもならず、ただただお互いの存在を無視するような仲に…。でも、ここは会社で、それなりにお互い大人で、尚かつ営業と編集だからちょうど良いような気もする。それにしてもどういう少年時代を送ると金子のような人間が出来上がるのかすごく興味がある。

 その真逆の金子が、ここ数日うれしそうに僕の机の周りをうろついている。

「今日はどこ営業したの?」
「あっそう…。それで『未読王』の売れ行きは?」
「注文取ってきた?」
「ふーん…。ねぇ、増刷? 増刷?」

 そういえば、先日社員全員に「一度は紀伊國屋新宿本店で行われている『本の雑誌フェア』を見に行くように! そして紀伊國屋様、杉江様アナタ達は偉いと3回拝んで帰ってきなさい」と忠告したとき、金子はこんなことを呟き、下を向いてしまったのだ。

「やだよ…。だって自分が作って、増刷のかかってない本がいっぱい並んでいるんだもん…」

 どっちがへそ曲がりなのかわからないが、ここにひとつの共通項があったのだ。僕も金子も本が売れるとうれしいってこと。これされあれば、他は全部逆でもいいか。