WEB本の雑誌

1月21日(金)

 会社に着いてすぐ、Aさんから電話が入る。Aさんは元・書店員で、結婚退職後、本の雑誌社で1年ほどアルバイトをしていたのだが、昨秋とある出版社に就職が決まり、営業&事務を任されることになったそうだなのだ。

 いくつか営業的な質問を受け、それに答えていると、自分がかつてこの会社に入った頃のことを思い出していた。

 僕の前任の営業マンSさんは極めて真面目な方で、几帳面な営業をされており、書店さんからの信頼もとても篤い人であった。それは「この度、急遽Sの後任ということで…」と名刺を差し出す度に、多くの書店員さんが嘆き悲しむことで伝わってきたものだ。僕はいったいこんな出来る人の後でどうやって営業をすれば良いんだと、駅のベンチに崩れるように座り込み、ああ、転職しなければよかったな、なんて落ちこんでいた。

 そのときまずこれはとても「今は」勝ち目がないと悟った。そしてとにかく本を売るのは3年経ってからだ、3年間は自分を売ろうと考えた。それは何も奇をてらう行動をするということではなく、DMやら訪問でゆっくりだけれど、自分の色を出していった。(あの頃はこんなホームページもなかった)

 前にも書いたことがあるけれど、営業マンは本を売っているのではなく、自分を売っていると考えている。だからこそ面白く、そして怖いのだ。

 そうやって営業していると、しばらくすると、何人か面白がってくれる書店員さんが現れた。数日前に書いた深夜プラス1の浅沼さんもそんな一人だ。そしてそんな書店員さんにわからないことを聞いていった。今でもそのやり方は変わっていないし、僕にはそんな方法でしか営業していけないだろう。

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 Aさんの立場がどんな立場なのかわからないけれど、出版営業は決して短距離走ではなく、長距離走だと僕は考えている。だから、ゆっくりと一日数歩でも進んでいくしかないと思うのだ。何せ根幹は「人間関係」。それがそう簡単に築かれるわけがないのである。

 ゆっくりと、頑張って下さい。