WEB本の雑誌

1月24日(月)


 吉祥寺のK書店さんを訪問すると、担当のMさんが棚整理の真っ最中。
 棚から本を出し、ホコリをはらい、背表紙を揃え、またきっちり入れ直す。

 本来であれば基本中の基本の仕事なのだろうけれど、とにかく唯一削れる経費である人件費削減のため、書店員さんがドンドン減っている現在の状況では、実はなかなか手の付けられない仕事だったりするのである。

 そういえば昔の書店員さんは、棚整理やそれにあわせての若干の棚陳列の移動あるいは平台の本の位置を変えることを「棚を耕す」なんていっていたっけ。あの言葉、機械屋の父親が使う「モノをこさせる」って言葉と同じようで、好きな言葉だったんだよな、なんて思い出しつつMさんに話を伺うとまさにその棚を耕しているところだったそうで、毎日少しずつでも時間があると気になっている棚を変えているそうなのである。

 この日は評論の棚を耕していたのだが、一番目に付く高さにあった「宮沢賢治」関係を少し上にあげ、今度は「三島由紀夫」をその場所に入れたりしていた。売れ行きはもちろん、季節だったり、事件だったりそういうものを考えつつ棚をいじっているとのこと。売上が上がるといいですねと話すと、いやいや既に棚から売れる本の割合が高いそうで、効果が出ているとか。うーんやっぱり見ている人は見ていてくれているんだな。

 これで本日の日記は一件落着なんて考えていた、次に訪問したP書店さんで文庫担当のTさんと話していてビックリなことが。

 なんと去年の1月号のベスト10で目黒が気合い一発一点張りでベスト1に選出した『シービスケット』L・ヒレンブランド著(ソニー・マガジンズ)が文庫化されているではないか!! あわてて手に取り確認したところ単行本は2003年7月の発売だったから、約1年半での文庫化。ただし驚いていたのは僕ひとりで、Tさんはもう日常茶飯事の様子で「今はもう、お客さんが単行本発売と同時に文庫は?と聞いてくる時代ですから」と話す。

 ちなみに今一番「小さい本ありませんか?」と問い合わせを受けるのは、映画放映中の『東京タワー』江國香織著(マガジンハウス)だそうで、「大きいのしかないんですよ」と答えるとほとんどそのままお店を出て行くそうだ。

 また2月には村上春樹の著作としては異例の早さで『海辺のカフカ』が文庫化されるそうで、いやはやこうなると単行本の既刊棚なんて必要なのか? なんてついつい考えてしまう。いやもちろん文庫なし出版社である本の雑誌社のような会社にしては、既刊棚がとても重要な棚なのだが、文芸の棚を注意してみるとかなり多くの「文庫化」された本が並んでいるのだから、これでは耕しようもないのか…。

 うーん、うーんと唸りつつ、ついでに本の寿命について考えてしまう。
 単行本が約2年、文庫の寿命は売れ行き次第、それにしたって月に20点近く出ている出版社であれば、年間200点くらいは品切れ絶版の憂き目にあるだろうから平均4、5年か? そうなると6,7年というのが文芸書の寿命になるのかもしれないが、これはまだ良い方だろうな。

 はぁ、俺たちは一体何を作っているんだ…。