7月22日(金)
夕方、新人の藤原力が、糞詰まりのような顔をしていた。
入社早々体調を壊されたのではたまったもんじゃないので「どうした?」と声をかけると「相談なんですけど」なんて今までの僕の人生で一度もそんな振られたことのない言葉をかけられる。ワオ! オレってもしかして頼れる先輩?
「明日なんですけど編集部は本の雑誌の下版前で出社日なんですよ」
「うん」
「でですね。僕の愛するFC東京は国立で夜の6時30分から試合がありまして」
「うん、J2降格予定のチームね。」
「降格なんてしません!! そうじゃなくて、この試合に行って良いものか良くないものか‥」
あっ、もしかして仕事サボってサッカーに行って良いのか悪いのかをオレに相談しているのか?
そりゃ聞いた相手がマズイっていうか、お前確信犯だろう。ふふ。頼れる先輩というよりは、人生の師として教えてやろう。
「あのな、サッカーの試合つううのはその日その瞬間しかないわけだ。それに比べて大概の仕事は明日でも明後日でも良いわけだ。だったら結論はすぐでるだろう。それに明日なら国立に行ってサッカー見て、それでまた笹塚に帰ってきたって出来るじゃんか」
「でも僕まだ新入社員ですし」
すっかり話を聞いていた浜田が割り込んでくる。
「杉江さん、入社してすぐ直帰してサッカー行ってましたよ!」
「最初が肝心なんだよ」
せっかく神を見るような目で僕を見つめていた藤原君が、また可哀相な生き物をみるような目で僕を見ているではないか。
「どっちにしても好きなら行けよ。好きなことやるために働いているんだろ。それとその好きなことと同じくらい好きだと思える仕事をやっていくうちに探すんだよ。それが見つかったら思い切り働けばいいじゃん。」
結局、藤原君はファミリーマートに行ってチケットを購入してきた。
コイツ、結構良い奴かも。東京サポじゃなきゃ‥。