10月19日(水)
神保町には狭いエリアに大型書店が4軒もある。三省堂書店、東京堂書店、書泉グランデ、書泉ブックマート。どのお店も歩いて数分、下手したら数十秒で着く距離にあり、知らない人が見たらひとつで充分なんじゃないの? なんて思われるかもしれない。しかしこれがキレイに棲み分けられていて、品揃え(見せ方)がそれぞれ違うため、共存共栄というか客層が違いがハッキリ出るのである。
それは販売データを一目瞭然だ。
例えば本の雑誌社の本だと、まず坪内祐三さんの本は東京堂書店で一番売れる。とにかく売れる。神保町どころか日本一売れる。
それは坪内さんの書かれるようなものが好きな人が、東京堂書店の品揃えが好きというのはその棚を見ていただければわかるだろうし、そもそも坪内さん自身が贔屓にされている書店さんだから、お客さんも坪内さん=東京堂書店という意識で、そこで買うことを楽しんでいるのかもしれない。
ところがこれが編集長の椎名や沢野の本、あるいはその他普通のエッセイになると俄然三省堂書店で売れるのだ。まあこれは普通に考えたら規模、来客点数とも神保町では一番だからこの結果がでるのが当然といえば当然だろう。
そんななか面白いデータが出たのが『都筑道夫少年小説コレクション』だ。神保町ならどこでもまんべんなく売れるかななんて考えていたら、なんとなんと?というか、やっぱり!というか、書泉グランデで売れていくのである。元々ミステリーやSFなどが強い印象があったんだけど、本当にそうなんだと実感した次第。そういえば古本ものもこの書泉グランデがよく売れたんだ。『未読王購書日記』や『あなたは古本がやめられる』とか。
なんてことをその書泉グランデのHさんに話していたら、「いやーもっとうちが強いのがあるんだよ、ココ、ココ」と指さされたのが、入って左の棚である。そこには復刊された『植草甚一スクラップブック』シリーズや『植草甚一スタイル』(コロナ・ブックス)などが並べられていた。
「今さらかな?なんて思ったけど、出版社がビックリするくらい売れてるね。あとは昭和ものとか、ああジャズもの、そうそうこのジャズのCDとかもすごい売れるんだよ。まあ、もしかしたら僕が好きで並べていたからお客さんがいつの間にか付いたのかもしれないけど」
担当者の好みはもちろん品揃えに反映されるわけで、そういった歴史の積み重ねが、このような神保町の客層の違いを生み出してきたのだ。今、多くの街で起きている大型書店出店ラッシュが、時を越えてこのように成熟することがあるんだろうか。