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3月21日(火) 炎のサッカー日誌 2006.02

 ぬき足、差し足、忍び足。階段を静かに下りて、前夜、こっそりレプリカユニフォームなどの観戦グッズを詰めて込んだカバンを手にする。さあ、と玄関を開けたところで、バタバタバタッと階段を駆け下りる音が、背中に聞こえる。

「パパー、ダメだよ。私も行くよー。待ってー」

 これはやっぱり血なのだろうか?
 昨年の終盤、妻のあまりに冷たい視線を感じ、仕方なく娘を埼玉スタジアムに連れていったのだが、その娘がすっかり浦和レッズにハマってしまったのだ。うーん、5歳の女の子にサッカーが面白いんだろうか? というかボールが見えているのか?

「面白いの?」
「うん、面白い。わたしポンテが好きなの」
「ポンテ?」
 5歳にしてポンテ。もしかしてお前は生まれながらのサッカー通か?
「うんうん、パパと同じ10番だからね」

 当然、僕、娘を抱きしめ「愛してる」と呟いた。

 しかし、だ、いくらサッカーが気に入り、ポンテが好きでも、僕の見ているのはゴール裏だ。若干中心から外れているとしても、大きな旗は振られるし、そこは闘いの場、罵声だって飛ぶ。アホ! 死ね! バカ! 青と赤のユニフォームを着たチームなら「ぶっ殺せ!」なんて。いやそう叫んでいるのが父親である僕で、これほど教育上良くない場所もないだろう。

 妻にそのことを話すと、「あんたさ、家でサッカー見ていても一緒なんだから、今さら教育なんて言わないで。そもそも教育なんてする気あるの?」とまるでファールを取られたサッカー選手のように両手を上に向け「なぜ?」のポーズをされてしまう。

 まあ、仕方ない。とにかく行きたいなら連れていこう。その代わり試合の間は「絶対邪魔しない」「帰りたいといわない」。それから「本気で応援する」を約束させてママチャリに乗せて同伴出動。これで父母、兄そして娘と僕の家族は3代に渡って埼玉スタジアムにいつことになる。

 前半はドンビキのセレッソ大阪相手に攻めあぐねたが、後半開始早々、我が観戦仲間S出版のYさんが叫んだ。

「遠くからでも打て!」

 その声が聞こえたのか、小野伸二がビューティフルなミドルシュートを決めて先制。こうなりゃセレッソもドンビキを辞めて攻めざるえず、やっといくらかサッカーらしくなり、あれよあれよとワシントン、闘莉王がゴールを決め、3対0。

 いやはやこの程度の調子で3点取ってしまう今のレッズは何なんだろうか? というかこれだけ強くなったからこそ娘を連れてサッカーに行けるわけで以前だったら本当に危なくて絶対連れて来なかっただろうし、妻もOKしなかっただろう。

 とにかくこれで3勝1分け。週末は唯一上にいる邪魔者・横浜Fマリノスと頂上対決。我らが目指すはアジアナンバー1。こんなところでつまずくわけもなく、さぁ、蹴散らしましょう!