WEB本の雑誌

10月17日(火)

 吉村昭『漂流』(新潮文庫)
 こんな面白い本が書店の棚で、しかも多くのお店で平積みで、ぐいぐいと版を重ねていたなんて。嗚呼、猛烈に反省。しかし死ぬまでに読めたことに感謝。

 僕のオールタイムベストに絶対入る『エンデュアランス号漂流』A・ランシング(新潮文庫)や昨年の本の雑誌ベスト10の第3位『脱出記』S・ラウイッツ(ソニー・マガジン)、あるいは漂流もの偏愛編集長・椎名誠の漂流ものベスト1『無人島に生きる十六人』須川邦彦(新潮文庫)なんかに胸を熱くした人は是非! って普通は『漂流』が定番で、その後にこれらの本を読むんだろうな。ああ、恥ずかしいけど、面白かったなぁ。

 ブルーな気分は、走って忘れようと、小走りで営業。

 その営業では11月中旬刊の『二人目の出産』安田ママ著の販促をしているのだが、いやー書店さんの棚というのは面白い。たいていの書店さんで、恋愛ものなんかは女性エッセイ、すなわち文芸で扱われているのに、出産育児となると実用書の扱いになる。

 どうしてなんだろう? なんてずーっと考えているんだけど(書店の棚から見た社会学なんて本を誰か書いてくれないかなぁ)、とある書店さんでは『Mammaともさか こそだてちゃん編』『Mammaともさか こそだてちゃん編』(ともにインデックスコミュニケーションズ )を文芸と実用の両方で置いてみたら、やっぱり実用の出産育児本の棚の方で売れたのよなんて話も伺い、ただいま僕の営業先は、未体験ゾーンの実用書エリア。

 右も左もわからず、書店員さんもほとんど知らず、新入社員の気分で、名刺を差し出し、緊張営業。吉野朔実さんや清原なつのさんのコミックのときも思ったけど、ジャンルが違えば、まったくの別世界、これはこれで大変だけど面白い。

 おまけにならばこういう本はファミリー層のいる郊外かな?なんて勝手に予測をしていたら、意外や意外、本日訪れた有楽町のS書店さんでは、「実は結構強いんですよ、出産、育児本。たぶん働きながらという人が多いから悩んだり考えたりしてるんでしょうね」とのことで、これは都心でも売れるのか。

 どっちにしても出産育児本を、妙に熱を込めてするおっさん営業マンというのが、実用書担当の書店員さんにどう思われるかわかないのだが、僕はこの『二人目の出産』を読んで何度も泣いたり笑ったりしているわけで、腹は張らず、胸を張って営業している。

 さっ! 明日も頑張ろう。何せ『漂流』の長平は孤島であんなに頑張ったんだから。