10月25日(水)
通勤読書は当然『一瞬の風になれ 3』佐藤多佳子著(講談社)。
ページをめくる手が止まらない。いや止められない。早く読みたい、けれど読み終わりたくない。ずっとこの世界のなかにいたい。
しかしどうしてこんな発売スタイルと取ったのだろうか? 上下巻で良かったんじゃないか? いや1巻が1年、2巻が2年、3巻が3年という学年で分けたのか? それならそれでいいけれど、せめて同時発売にして欲しかったぞ。この1ヶ月ごとの間隔が、この本の面白さと販売の興をそぐことになったら罪だぜ、講談社。
なんて思っていたが、そんなことは読み出してすぐ忘れてしまうほどのめり込んでしまい、会社に就いてすぐ読書休暇を申請し、読み続ける。
そして読み終えたのが午後。もはや仕事なんて手に付かない。最後の方は、自分も陸上競技場のトラックに立って、コースを駆けているような気分。間違いなく新二や連と一緒に僕は走っていた。だから心拍数もそうとう上がっていたはずだし、しばらく頭が痛かったほど。
これはスポーツ小説の王道中の王道を直球ど真ん中勝負した1冊だ。そしてその力と想いを込めて投げられた1球は、打ち返されることなくミットにめり込み、スポーツ小説なんて枠を飛び出し、大傑作になった1冊だ。 ああ。本当に叫び声を上げたいほどの傑作。恐るべし、佐藤多佳子。ありがとう、佐藤多佳子、って仕事しろよ、俺。