WEB本の雑誌

12月6日(水)

 社内の、あるいは社外の人から「浦和レッズが優勝したからでしょう!」と突っこまれるのだが、そうではなくて、正真正銘息子からノロだかロタだかのウィルスをうつされ、月曜の午後から下痢とゲロの悶死。月曜日は出社していたのだが、早退せざるえず、その帰り道の長かったこと。途中新宿駅と赤羽駅のトイレに駆け込み嘔吐嘔吐。これはとても自転車に乗れないと、駅まで車で迎えに来て貰おうと妻に連絡を入れたら、今ちょうど娘が吐き、病院に駆け込んだとのこと。そう言っていた妻もそして同居している義母も、その夜には下痢とゲロに襲われ、一家全滅。地獄絵図。

 その晩から今朝まで我が家は誰も何も食わず、医者から貰った薬とポカリスエットで生き延びていたのだが、本日は搬入と部決というほとんどいても役に立たないひとり営業マンにとっても数少ない「俺にしか出来ない仕事」が待っていたので、肛門と気道をキッチリしめて出社。

 気も紛らわすために読み始めた本が辞められず、危うく乗り過ごしそうになってしまった。その本とは『黄泉の犬』藤原新也(文藝春秋)。

 僕は10代後半にこの藤原新也や沢木耕太郎の著作をまさにむさぼるように読んだクチだが、いつの間にかその著作と疎遠になっていた。両者とも小説を書き出したあたりからなんとなく趣味が合わなくなった気がしていたのだが、昨年は沢木耕太郎の『凍』に腰を抜かさせられ、今年は藤原新也に『黄泉の犬』で胸ぐらを鷲づかみにされた気分だ。

 いやーあの『メメントモリ』(情報センター出版局)や『印度放浪』(朝日文庫)の詩や散文の奥にこんなドラマがあったなんて知らなかったし、そもそもこれらのドラマを書かずにいた藤原新也の抑止力に戦く。

 また特に第1章「メビウスの海」で描かれるオウム真理教・麻原彰晃に対する新たな解釈は、小説以上にスリリングで、読み出したら誰もがページをめくる手を止められないだろう。まさに目をひん剥かされた1冊。

 そして行間から伝わってくるのは「考えろ! 考え続けろ! そして考え続けるためには、冷静に行動あるのみ」というメッセージ。そうだ、いつの間にか僕は歳をとって考えることを疎かにしていたのだ! うう、すごい。凄すぎて吐きそうだ。