WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【単行本班】2007年12月の課題図書>『ウォッチメイカー』 ジェフリー・ディーヴァー (著)
評価:
まずスゴイのは中味よりそのブ厚さ。二段組の500ページ、そのうち第一部だけで半分を使っていて、事件は次々と起こるが話はなかなか進展しない。「なんだよー、つまんねーよー、ブーブーブー」と、敵チーム攻撃中のサポーターみたいになってしまう。
ところがですよ。我慢して前半を乗り越えて後半に入ると、ページをめくる指が止まらなくなってしまうのですよ。さすがはリンカーン・ライム・シリーズ、読者を裏切る術を心得ておりますな。ライムは頭脳を駆使して天才的犯罪者“ウォッチメイカー”の二重三重の計画に立ちはだかる。彼を補佐する脇役たちも人間臭くてグッドです。なかでも助演賞は尋問のエキスパート、ダンス女史でしょう。相手の一挙一動を見逃さない眼力ったらもう、息を飲んでしまいました。(来年刊行の、彼女が主人公となった邦訳作も期待大)
でもねえ、やっぱ前半ボリュームありすぎ。「げぷ」って感じ。
評価:
読み終わった後、家にある『ボーン・コレクター』を読みたくなりました。まだ課題本が何冊も残っているというのに。ぐっとこらえ、原稿を全部書き終わったら読もうと思っています。―というくらい面白い!
こういう本を紹介するのはとても難しいです。内容を書こうと思うとネタバレになりかねないし、かといって緻密な構造が読者を翻弄する、と言ったところで面白くもなんともないでしょう。あ、新キャラクター登場です。その人物の活躍だけで一冊書けます!って次回作はそれらしいです…。
とにかく、1ページ目を開いてみてください。あれよあれよという間に引き込まれてしまいます。
評価:
最初の三分の一くらいを読んで「いかにもアメリカの刑事ドラマでありそうな話だな。こういうのだったら、たまにテレビで見るからいいや」なんて、本書を置いてしまう人がいたとしたら、それは悲劇だ。本書は、本を紹介する文章によく使われるけど実際にその本を読むとほとんどの場合「そこまでじゃなかったな」と思わされる典型的太鼓もちフレーズ<後半は怒涛の展開>が、嘘偽りなく体現されている稀有な例なのにっ!
天才捜査官と天才犯罪者の知恵比べは本当にスリリング。電車の中で読んでいたのに、思わず「うわ」と声を出してしまったほどのサプライズの連続。
『このミステリーがすごい!』海外編一位も納得です。
シリーズものの七作目とのことですが、この本から読んでも全然OK(現に私がそうです)。あっと驚かされるミステリーが読みたいなあ、というそこのあなた! 本書をぜひ! ……私は太鼓もちじゃありませんから。たぶん。
評価:
実際に自分で読む前に「ディーヴァーの作品の中では凡作」「『このミス』1位は過大評価し過ぎ」などという評判を聞き「どんなものか…」と思っていたのだが、心配ご無用、十分楽しめました(ただ「魔術師」を超える犯人というのは言い過ぎかなと思うが。いや、「魔術師」読んでないんですけど。でもイリュージョニストよりすごい犯人っているのか)。
ウォッチメイカーと名乗る連続殺人犯。残忍極まりない手口と異常なまでに神経質な性質を示す証拠の数々。果たして隙などあるのかと思わせる難敵を、しかしリンカーン・ライム・チームはどんどんと追い詰めていく。
さて、ミステリーにどんでん返しはあらまほしきものだが、本書に関してはややあり過ぎたという気がしないでもない。せっかく「ウォッチメイカーはいったい何のためにこんな仕掛けを??」という興味で引っぱってきたのに、「えー、狙いはそんなとこにあったんですか〜!?」と驚きというより拍子抜け感が。でもまあ、あんまり贅沢言ってはだめですね。こんなに楽しませてもらったんだから。
評価:
名探偵リンカーン・ライムシリーズの7作目。現場鑑識中に事故に遭い四肢麻痺のリンカーン・ライムらのもとに「ウォッチメイカー」と名乗る殺人者が…。
「ウォッチメイカー」の時間と時計への異常な執着と、連続殺人の動機の分からなさが不気味でした。
かなり綿密な犯罪計画に、きりきりしてしまいました。ラストへ向けてのどんでん返しが、一度では終わらず、読んでいるだけで若干、体力を消耗します…。リンカーン・ライムらと犯人の頭脳戦がかなりの読み応えです。
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