『灯台守の話』

灯台守の話
  • ジャネット・ウィンターソン(著)
  • 白水社
  • 税込2,100円
  • 2007年11月
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佐々木克雄

評価:星3つ

 はじめて読みましたよ、ウィンターソン。じわじわと面白さが染みてくる。
 崖の上、斜めに突き刺さった家に生まれた主人公シルバー、風の強い日に足を滑らせて崖下に消えていった彼女の母親──奇妙な序章に、以降の展開に期待が高まる高まる。
 ところが単純に面白いとだけ言っていられないのですね。みなし児となった彼女を引き取るのは、盲目の灯台守ピュー。彼の語るサブストーリーが本筋にうねうねと絡みつき、登場する人物の影の部分が炙り出されてくる。時間をひゅんと飛び越える奥深い「灯台守の話」に、いつの間にか聞き入ってしまった。
 話すことで人は存在を示し、話に出てくる人物もまた浮かび上がる──そんなメッセージが投げかけられているように思えた。本を書くことでも、また然りなのだろう。
 でも、つまらん話だと「聞かされる側」は苦痛ですよね。この本は面白かったけど。

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下久保玉美

評価:星3つ

 百年前、二つの人生を行き来した牧師ダークの物語とその物語を語る灯台守に育てられるシルバーの物語です。
 人は生涯に一作くらいは小説が書けるものだと、その小説はつまり自分の物語であり自分の人生のことだ、と誰かが昔言っていました。誰かは忘れたけど。人はただ生きているのではなく、日々自分の物語を紡ぎながら生きています。その物語を言葉にできるかできないかは別にして。ダークの物語は灯台守に「語られる」物語であり、シルバーは自ら物語を語ろうとします。物語を語ることこそ、人生ってことじゃないですか!
 本書を読んでいるとき、いしいしんじの『麦ふみクーツェ』(新潮文庫)を思い出しました。本書を読んでよかった、という方はこちらもどうぞ。

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増住雄大

評価:星2つ

 本書は、決して長くはないのだが、壮大な物語だ。
 ソルツという港町で、盲目の灯台守ピューに育てられる、みなし児の少女シルバー。ピューが少しずつ語る、その町で百年前に暮らしていた牧師バベル・ダークの物語に、シルバーは耳を傾ける。シルバーとダーク、二人の物語が交互に語られ、それらはやがて交差していく……。
 描かれているのは「物語ること」の大切さ、だ。「物語ること」によって人は救われる、ということが、シルバーの物語、ダークの物語、間に挟まれる様々な挿話を通じて読者に示される。「物語ること」は人の道標となる。灯台の光が船乗りの道標となるように。
 作品全体に流れる空気は、いい意味で、とらえどころがない。
 ゆらゆらしている。けれど、どっしりしている。難解だ。しかし、親しみ易い。まるで、その日その日で違う顔を見せる「海」のような作品である。

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松井ゆかり

評価:星4つ

 孤児となった少女と灯台守の物語ということで、なんとなく「赤毛のアン」のような話を想像していたのだけれど、よりファンタジックで官能的な物語であった。みなしごの少女シルバーと百年前に生きていた牧師ダーク、そして彼の人生について物語る灯台守ピュー。クレスト・ブックスに入ってても何ら不思議はないという感じ。
 そんなに波瀾万丈な話ではない。いや違う、とても静かで波瀾万丈さを感じさせない話というのが正しいか。人が去った後にも思いは残るということが胸に迫ってくる。
 岸本佐知子さんの翻訳された本は、作者よりも訳者に惹かれて読む。エッセイ集「気になる部分」に収められた塔をこよなく愛されているという話はおかしかった。きっと灯台も好きでいらっしゃるだろう。岸本さんだったら灯台を出て行かなかっただろう。

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望月香子

評価:星2つ

 母と二人で暮らす少女シルバーは、ある日母を失ってしまいます。ひとりぼっちのシルバーは、盲目の灯台守ピューに引き取られ、そこで生活をすることに…。
 ピューがシルバーに眠るまえ話してあげる物語は、100年前に生きていた牧師ダークの人生について。
「大きな愛」をテーマにした物語なのだと思うのですが、私には最後までその答えが見えずに終わってしまいました。汲み取れない自分が少し悲しいです…。でも、そもそも答えなんてない、ということかもしれません。何かしらの結論探し好きな私にとっては、ちょっぴり物足りませんでした。
「人生は短いので、今を生きよう」というメッセージを受け取れた気分です。

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