WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【単行本班】2007年12月の課題図書>『オン・ザ・ロード』 ジャック・ケルアック(著)
評価:
嗚呼、何てお馬鹿で、何て素敵な青春なのだろう。
アメリカ青春文学の金字塔は、半世紀の歳月を飛び越えてもなお色褪せることなく、広大な大地を走る「ロード」へと導いてくれるのですねえ。
どこをめくっても金太郎飴みたいに旅の途中。豪放磊落な友人、ディーンと共に時速100キロ以上の猛スピードでアメリカを駆け巡る主人公サルの目線には、我々が想像しうるアメリカらしいアメリカが描き出されており、ちょっとしたウルトラクイズ気分が味わえた。
人生はよく旅に例えられるが、それは帰結するところがあるからかなと。都合四回の旅から帰るサルやディーンには帰るべき場所があり、そのラストにほんのり哀愁が漂っているから、読み手は、そこに彼らの青春(≒奔放な旅)の帰結を感じ、ノスタルジーを感じてしまうのだ。
これ読んだら、日本の青春小説『哀愁の町に霧が降るのだ』が読みたくなってきたゾ。
評価:
厚い本なんですけど、読み始めると早いです。文章にスピード感があるからでしょう。十代の終わりから二十代の始めの毎日モヤモヤとしていたころに本書を読んでいたら、このスピード感が快感になっていたかも。あと、サルとディーンたちの不健全さに惹かれていたかもしれません。
もう、すごい不健全!
物語中、ずっーと車で旅をしているのですが、車上にないときはずっーとドラッグしてハイになってるか、酒飲んで乱痴気パーティをしてるか、女の子をナンパしてからんでるか。徹底して不健全。
タイトル通り、彼らの旅は何かの途上で何を志向しているかといえば、おそらく自由を。しかし、自由であろうとすればするほど自由に縛られていませんか。自由への解放というよりもむしろ自由に束縛されていっているように思えましたけど、ね。
評価:
「半世紀前から若者たちの永遠のバイブル」だとか、「その後の文学・文化に決定的な影響を与えた」だとか、「注目の『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』第1回配本」だとか、そんなの全然関係なしに、一つの小説として、ただ単純に、とてもおもしろい。
本書は一種の「自伝的小説」で、ケルアック自身がモデルになっている語り手のサル・パラダイスと、その親友ディーン(こちらもモデルあり)が、アメリカ大陸を縦横無尽に移動する話だ。構図としてはいつもディーンが引っ張ってサルがついていく。都合、アメリカ大陸を横に三往復、縦に一往復するのだけれど、その途上で、様々な場所を訪れ、いろいろな人に出会う。
まあ、何しろとにかく、読んでいておもしろいのだ。こちらまで楽しい気分になるのだ。今すぐにでも車に乗って、どこでもいいからどこかに行きたくなるのだ。
多くの先達と同じように、この本は私にとっても、とても大事な一冊になった。
評価:
こういった小説を読み、人生の書だと思う読者もいれば、とりたてて心を動かされない読者もいる。私は後者だ(「ライ麦畑でつかまえて」などにもピンとこなかった)。ぐっとくるポイントは人それぞれでいいと思うし、それが当然だろう。
それでも以前読もうと思って途中で挫折したときに比べたら、ずいぶんこの作品に対して寛容になったと思う。現在の半分くらいの年齢だったそのときは、主人公サルやディーンがのんきにぶらぶらしているただの怠惰な若者に思えて憤慨したものだ。でも今は彼らの悩みもある程度理解できる気がする。もちろん感心しない行動も多いが、家族や友だちを大切にする気持ちが胸にしみる。
しかし、本来はこういう種類の本って若いときほど共感するものではないのだろうか?ということは身体は老いても精神は若返っているということか?20年後にまた読み返してみたい。
評価:
離婚を経験した小説家のサルが、要注意人物とされるけれど何かきらきらとしたものを纏ったディーンとアメリカ大陸へ旅に出発!
ヒッチハイクでのガソリンの煙や、お腹が空いてもひとつだけで我慢したハンバーガーの匂いまでもが届いてくるような臨場感。サルとディーンの旅に便乗しているかのように一気読みでした。旅先での出会いやトラブルに、始終エキサイティングです。私も「オン・ザ・ロード」したい! と熱くなります。
ご存知、翻訳者の青山南さんの『本の雑誌』掲載文と合わせて読むと、さらに美味しいのはもちろんです。
WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【単行本班】2007年12月の課題図書>『オン・ザ・ロード』 ジャック・ケルアック(著)