『1/2の埋葬(上・下)』

1/2の埋葬(上・下)
  • ピーター・ジェイムズ (著)
  • ランダムハウス講談社文庫
  • 税込(上)893円 (下)861円
  • 2008年1月
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  1. 隠蔽捜査
  2. かたみ歌
  3. 名短篇、ここにあり
  4. AMEBIC
  5. ビネツ
  6. 1/2の埋葬
  7. 数独パズル殺人事件
岩崎智子

評価:星4つ

 たしかに言いますね、『結婚は人生の墓場』って。だから独身者は、結婚前日に最後の「バカ騒ぎ」をやる。それが「スタグナイト」もしかしたら、米国風の言い方、「バチェラー・パーティ」の方が、日本人には通りがいいかも。コメディ映画のタイトルにもなってるくらいだから。でも、本当にカンオケに入っちゃうのは、いくらブラックジョーク好きのイギリス人だって、やり過ぎでしょーが。そう、本作の「バカ騒ぎ」は、本当に、笑い事では済まされない。花婿が棺桶に閉じ込められ、その場所を知っている友人達は全員死亡!花婿のいる場所を知っている人は、世界中で誰もいない!
 婚約者の失踪に悲しむ花嫁の話を聞くのは、自身も妻に失踪された警視グレイス。悲しみに沈む花嫁を「すばらしい女優なのかも」と鋭く観察しながらも、去った妻の事は冷静に考えられない。「仕事には優秀だけどね…」なんて言われるタイプの不器用くんだ。まだ、本当に死んじゃいない「1/2埋葬された」花婿の命が保つか、不器用男の捜索が間に合うか。コメディ部分が排除されたタイムリミットものなので、時に息苦しくなりながらも、一気に読めた。「墓もの」を監督したから、というわけではないが、『シャロウ・グレイヴ』の監督ダニー・ボイルあたりが映画化すると面白そう。

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佐々木康彦

評価:星3つ

 生き埋めにされた人間を探して救出するだけの話に上下巻必要なのか?果たして自分はこの退屈に耐えられるのか?と読む前までは思っていましたが、全世界でシリーズ二百万部も売れている本作がそれだけの話なわけがなく、当然ながら杞憂でございました。退屈どころか、だれてきそうな中盤から後半にかけて新事実がタイミングよく挿入されるので、最後まで飽きずに読むことが出来ます。

 ただ、これは小説で読むよりも映像として観た方が、より面白そうですね。登場する魅力的な女性たちを映像で観てみたいですし、特に最後の方のアクションシーンなんかは良い意味で映画にありそうなクライマックスシーンで、映像で観ると迫力がありそうです。
 冒頭、いきなりのジョークも面白く、主人公グレイス警視も愛すべきキャラクターで、奥さんのこととか色々な謎が明らかになっていくなら、このシリーズ読んでいきたいです。

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島村真理

評価:星4つ

 結婚前夜の悪ふざけが悪夢に。でも、生きたまま埋められるなんてありえない。絶対。たとえ小説の中の話だとしても、冗談でも、背筋が凍るシチュエーションである。悪夢の主人公、マイケルだったとしたらと思っただけでパニックになりそうだった。最低最悪の状況を救えるのはグレイス警視のみ。とにかく時間がないうえに、不穏な陰謀まで絡んできて、一時も読むのをやめられない。ああ神様仏様グレイス様と思いました。
 さて、このグレイス警視、妻に失踪され、霊能力を捜査に取り入れたことで世間からバッシングを浴びてしまう問題児だが、なんとも好感を持ってしまう。出てくる女性出てくる女性を、非常にアゲアゲな評価をするのだ。ついつい女性を美しいと表現してしまう愛らしさ。下心と言えばそれまでだが、彼の今後の活躍とともに恋愛方面へも期待したいと思う。

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福井雅子

評価:星5つ

 ピーター・ジェイムズって何者? 誰かミステリー界の大物作家が第二のペンネームで書いているんじゃないかと思わせるほどの完成度の高さに驚いてしまった。こんな作家をなぜ今まで読んでいなかったんだろう……。文句なしの五つ星!
 斬新なアイデア、ページをめくる手を止めさせないストーリー展開、登場人物とともにじわじわと追い詰められていく焦燥感を演出するテクニック、事件の解決のために奔走するグレイス警視や周辺の人物を魅力的に描く表現力──どれをとっても一流である。そのうえ、作品を面白くするそれらの要素のバランスがよく、作品としての完成度が高いのだ。今後の創作活動が楽しみな作家がまた一人増えた。本国では既刊のグレイス警視シリーズ第二作、第三作を、まずははやく読みたい!

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余湖明日香

評価:星5つ

 久々に寝食を忘れて上下巻一気読み!!すっかり寝不足になってしまった。
結婚前夜、悪友たちが新郎を棺桶に入れて生き埋めにし、掘り返す前に友人全員が交通事故死。目撃者ゼロ。
上巻の裏表紙のあらすじをよむだけで「これは面白そう…」とおもっていたのだけれど、本編はさらにとんでもない。
結婚式目前で1人残された新婦、唯一いたずらに参加していなかった新郎の友人、捜査の指揮を取る警視それぞれが動き出すのだけれど、生き埋めになった新郎の状況はますます深刻になってゆく。あと少しだけ…と思っていても、つい先が気になって止まらなくなる。
警視グレイスが、妻が数年前に失踪したことを引きずっていたり、捜査の要で霊能者の所へ通ったりと一癖あるので、ぜひシリーズ続編も読んでみたい。
著者は脚本家・映画プロデューサーらしいのだが、展開のスピーディーさはまさにハリウッド映画のよう。大事な用事の前には決して読まないことをお勧めします。

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