『数独パズル殺人事件』

数独パズル殺人事件
  • シェリー・フレイドン (著)
  • ヴィレッジブックス
  • 税込893円
  • 2007年12月
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  1. 隠蔽捜査
  2. かたみ歌
  3. 名短篇、ここにあり
  4. AMEBIC
  5. ビネツ
  6. 1/2の埋葬
  7. 数独パズル殺人事件
岩崎智子

評価:星4つ

 「あなたと私の頭の構造は違いすぎる!まるで文系と理系みたい。」
 なんて、フラれる理由にまでなってしまう「理数系」と「文系」(とほほ)。でもそんな風に、何でもかんでも二つに切り分けてると、知らないうちに人生だって、読書だって、半分損してる?
 だとすれば、日本発の数学パズル「数独」を題材に描かれた本作は、「理数系の話?数字なんて大っ嫌い!」と思っている、文系の貴方にこそお勧め。だって中身はミステリー。「数学用語ばかりが出てきて、キャー大変!」なんてことはありませんとも。
 共通の趣味「パズル」を持ち、世代を越えた友情を育んでいたアヴォンデール教授の危機を知り、故郷に戻った数学者ケイト(ケイティ)。ケイティは、「確率が支配する安定した世界-数学」の事なら何でもござれ。でも、そんな彼女が「教授の殺人」というそれとは逆の事態に遭遇したからさあ大変。数学に取り組んだように「要素を自由にまとめ、再編成し、理論を立て」て、この事件を解決できるのか?「将来有望な堅い仕事」を持つ相手との結婚を勧めたがるケイティの叔母、よそ者扱いされて不満気味の警察署長、教授の愛(?)を巡ってケイティと争う博物館の事務員、などなど。静かな田舎町で起こった殺人事件が、個性豊かなキャラ達を交えてテンポよく綴られており、楽しく読めた。

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佐々木康彦

評価:星3つ

 タイトル通り本作は数独というパズルが事件の鍵を握ります。数独については敬愛する池乃めだか師匠が最近ハマっているというくらいの情報しか持っていませんでしたが、本作を読む前に何問かやってみるとこれがなかなか面白い。パズルを解くのに必要なのは論理的思考とヒラメキ、どちらも事件を解決するのに必要な要素で、ミステリーとの相性は良いのかも知れませんね。

 事件を解いていく過程もよいのですが、人付き合いの苦手な主人公ケイティが人と普通に接しようと努力する姿に好感がもてました。感受性の強い人間にとって、この世界は悪意の塊のように感じる時があると思います。でも「これだけは人に負けない」という何かを持つことと、人と接する時の少しの工夫で何とか世界と折り合いをつけられるんじゃないだろうか、と本作を読んで感じました。

「ケイティはオタク」、ケイティの部分に自分の名前を入れても違和感がないと思える人は読むと良いと思います。

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島村真理

評価:星4つ

 数独は私が好きなパズルのひとつ。空欄に数字がぴたりぴたりとはまったときの快感といったらない。これが欧米でブームになっているとは知らなかったけれど、人気とはいえパズルとミステリーがどう結びつくの?答えは簡単、数独が事件に重要な役割を与えられているようなのです。
 主人公ケイトの事件解決への奔走はもちろん、アメリカの田舎町のパワフルなおばばたちも、頼りになるけどおせっかいな叔母も、いかにも田舎の人のよさを感じてゆかいで面白いけれど、私が一番気になったのは、事件に巻き込まれたケイトと警察署長との恋の行方。二人がぎこちなくも次第に接近していくところ、ティーンエイジャーの恋愛みたいで可愛らしくて目が離せませんでした。こちらはパズルのように簡単には解けないようです。

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福井雅子

評価:星4つ

 適度に(徹夜しなくてもすむ程度に)のめりこめて楽しく読める、軽いタッチのミステリー。ミステリーとしてはありがちなストーリーではあるけれど、舞台はパズル博物館、ダイイングメッセージは数独パズルの中、主人公はパズルオタクで数学関係のシンクタンクに勤める数学者という、パズルだらけの作品であることがなかなか面白い。作品の中には数独以外にもいくつかのパズルが登場し、本物の数独パズル6問と、数独の生みの親である鍛冶真起さんが数独誕生秘話を披露した解説までついている。著者がパズル愛好者だということだが、まさにパズルへの愛にあふれた作品なのだ。
 パズル博物館はパズル愛好者の著者が思い描く「夢の城」なのだと思うが、実際にあったら私も行きたいと思うほど楽しそうな場所として描かれていて、パズルファンにはたまらないだろう。パズルフリーク必読の書?

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余湖明日香

評価:星4つ

 世界初・数独をテーマにしたミステリー!…ということ。
だけど、面白かったのは謎解きよりも数学者の主人公。
写真的記憶力を持ち、数学オタクなのに対人能力のスキルが低いことが悩み。
明晰な頭脳で問題をずばずば解決していくのかと思いきや、人と話すたびに論理的に話せているか気に病み、せっかくデートに出かけても居心地の悪い思いをして、数学の話ができる人と落ち着きたいと思ってしまう愛すべきケイト!
パズルや数学を使ったミステリーを期待していて、そちらは少し物足りなかったけれど、不器用なケイトを一生懸命応援したくなる。ケイトが住むニューハンプシャー・グランヴィルの町の人たちも一癖も二癖もあって魅力的。
読み終わってもおまけの数独が6題あるので、これからじっくり楽しみたいと思います。

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