『ジャンパー グリフィンの物語』

ジャンパー グリフィンの物語
  • スティーヴン・グールド (著)
  • ハヤカワ文庫SF
  • 税込740円
  • 2008年2月
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  4. 墓標なき墓場高城高全集(1)
  5. ひなのころ
  6. 贖罪
  7. ジャンパー グリフィンの物語
岩崎智子

評価:星3つ

映画『ジャンパー』の前日譚らしい。映画未見のため、『スター・ウォーズ』シリーズでアナキン(ダース・ベイダー)を演じたヘイデン・クリステンセンが、ジャンパーらしきものを着て飛んでいる帯を見て、てっきり服が特殊能力の源だと思い込んでいた。映画のタイトルだから仕方がないというものの、果たしてこの邦題で「ジャンパー=ジャンプする者=テレポーテーション能力を持つ者」と、すんなり理解してもらえるんだろうか?
本作では、特殊能力を持つ少年グリフィンが、開巻31ページ目にして天涯孤独に。そこから始まるのは、お定まりの、追跡をかわしながらの逃走劇。助けてくれた友人、憧れていた年上の女性、優しい母親代わり、初めて出来た親友、そして初めて愛する人、等々。ここまで全てを奪われて、相手に正義を説かず復讐を選ぶ彼を責めるのは、ナンセンスか。誰もが羨む能力を持ちながら、その能力故に追われる皮肉な運命を辿るグリフィンが、次第に逞しくなってゆく姿を描いたビルドゥングス・ロマン。但し、一点違和感が。グリフィンが『ハリー・ポッター』シリーズを読んでいたり、スティーヴン・キング原作の映画を見ていたり。虚構の話なのに、わざわざ現実世界との接点を持たせなくても良かったのでは?

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佐々木康彦

評価:星4つ

 ポピュラーな超能力の中で、瞬間移動は非常に魅力的です。目的地に一瞬で移動出来るのはもちろん、溺れそうになっても、高いところから落ちそうになっても、瞬間移動すれば大丈夫。敵と対峙しても後ろから襲われたりしない限り傷つけられる可能性は少ない、とほぼ無敵状態に思えます。ですから、この能力者を物語の主人公にする場合、敵の設定が非常に難しいと思うのですが、本作では組織的に活動する瞬間移動を感知出来る能力者を敵にすることで、見事に力の均衡を保っていて、非常に緊張感のある内容でした。謎の組織は、主人公グリフィンに普通の生活を送ることさえ許しません。それでも色々な人の助けを受けながら成長していくグリフィン。読んでいてすごく哀しくなるところもあるのですが、それだけにすごくグリフィンのことが好きになりました。
 映画観て読むも好し、読んでから映画を観るも好し、これを読めば映画をより楽しめると思いますし、映画を観れば、本作をより楽しめると思います。

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島村真理

評価:星3つ

 はじめ、映画化された「ジャンパー」の原作本かと思ったら、その番外編でした。前日譚ですが、“ジャンパー”グリフィン少年の、激動の成長記。あまりにも悲劇的で震えてしまった。
 そもそも“ジャンパー”とは、「テレポーテーションですきなところへ飛んでいくことができる人」のことだ。若干5歳で、この才能が発露してしまったグリフィン。おいしくて魅力的な状況に思えるが、“出すぎた杭はうたれる”がごとく、その才能が彼と彼の周辺に不幸を呼び寄せてしまう。とても、わかりやすい状況だけれど、無常で不平等なのはやっぱり許せないよね。大きな権力に踏みつけられ、殺されそうになる彼を、心から応援しました。そして、その後の彼の様子が知りたくて、映画、行ってきました(でも、物足りなくて原作も読みたくなりました)。
 映画の設定にあわせて書かれた本書ですが、原作者の手によるものなので文句ない内容。こんな広がり方もあるなんてうれしいです。

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福井雅子

評価:星2つ

 映画「ジャンパー」の前日譚という位置づけで書かれた物語なのだが、テレポーテーションという使い道の多そうな素材を手にしているわりにはストーリーに意外性がないように感じた。もっとひねったストーリーが可能だったように思えるし、グリフィンにしてもその他の登場人物にしても、それぞれの心情やそこに至るまでの人生をもっと深く掘り下げて厚みのある物語にして欲しかったと思う。
 「テレポーテーションできる人間」という面白い設定であるだけに、もったいないとか物足りないと思ってしまった。「映画の登場人物のひとりについて、ちょっと説明してみました」というスタンスが作品に出てしまっていて、新しい物語を作ろうという気概が感じられないのも残念。

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余湖明日香

評価:星3つ

空間から別の空間へ、一度行ったことがある場所で強くイメージできる場所ならどこへでも移動できる能力…ドラえもんの「どこでもドア」に誰もが一度は憧れると思うが、このジャンプの能力があればどこへでも好きなときに好きなところへいける。ところがジャンパーをねらう闇の組織に追われ、少年は9歳にして天涯孤独に。頭脳とジャンプを駆使し、努力して大好きな人を守ろうとする姿が健気。
このジャンプはどうやって行われるのか、なぜできるようになったのか、などなど全く触れられずこの小説世界では当然のものとしてある。ジャンプした先に新しく建物が建っていたら?人が立っていたら?全くそんなことを悩みもせず主人公はジャンプしまくり。ジャンパーを追う組織も全く正体がわからない。もしかすると本編『ジャンパー』ではそこら辺も深く描いてあるのかもしれないけれど、そこが少し物足りなかった。

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