『古本道場』

古本道場
  1. 流れ星が消えないうちに
  2. 古本道場
  3. サッカーボーイズ 再会のグラウンド
  4. 翡翠の眼
  5. 人間の測りまちがい 差別の科学史(上・下)
  6. ただマイヨ・ジョーヌのためでなく
  7. 四十七人目の男(上・下)
岩崎智子

評価:星4つ

引っ越したり職場を変わった時に、まず探すのが図書館と書店だった。なのに今は、実際行って本がないとイヤなので、なるべく無駄を無くそうと「ネットで調べればいい。そしてあったら、ネットで買えばいい」と考える。「古本道を究めた師匠・岡崎氏の指令を受けて、作家・角田氏が実際の書店を訪れ、依頼された本を探す」という本作の企画は、こうした発想とはまるで逆だ。体験記から自然と浮かび上がるのは、「本とは何か」「書店とは何か」ということと、便利さの代わりに我々が失ったもの。「(書店で)棚から棚を見ていくうち、忘れていたいろんなことがぽろぽろぽろぽろ勝手に思い出(p21)」された経験。「とおりいっぺんの現実とはべつに、時間の沈殿する不思議に静かな空間を、その魅力を、知って大人に(p108)」なっていった学生時代。鎌倉の古書店を訪ね、今は亡き米原万里さんを訪問した、なんてエピソードもある。意外だったのは、幕張メッセに行くための通過駅や、出張で新幹線に乗る出発地点としか見ていなかった東京駅構内に、古書店があったこと。せかせかした日常から離れたくなった時、訪れてみようっと。

▲TOPへ戻る

佐々木康彦

評価:星3つ

 古本屋さんというのはあまり利用しないのですが、本書を読むとなかなか魅力的な場所のようで、さっそく明日にでも寄ってみようか、といった気分にさせられます。100均コーナーで自分にとってのお宝本を見つけるとかいろいろと楽しみはあるでしょうが、やはり店主から「おっ、佐々木くん。例のアレ、入ったよ」と言われるような、そういったやりとりに憧れたりします。古本は注文して仕入れるものじゃない分、目当てのものを見つけた時もしくは、思いがけず見つけた逸品に出会った時の感動は、普通の書店以上にあるのかも知れませんね。最近は、ネットでいろいろなことも調べられるのですが、古本屋では「超個人的趣味・興味が、どんどんつながっていく」のだとか。たしかに、流行の本を置かなくて良い分、特化している部分もあるのかも知れません。
 岡崎師匠と矢名助のやり取りも軽妙で面白く、角田さんの旅行記としての楽しみもあるお得な一冊。

▲TOPへ戻る

島村真理

評価:星5つ

 「古本」、新刊書を扱う普通の書店とは違うこの響き、やはり本好きをワクワクさせるでしょう。古本屋=安く本を買う場所でしかない私ですが、実はたくさんの発見と、すでに消えてしまった逸品に会える場所のようです。最近は、おしゃれに進化した古本屋というものも多いらしい。
角田光代さんが、古本の師匠(岡崎武志氏)に指定された古本屋を訪れ、時にはお題に従って古本を買ってくる。古書の価値などナンボもわからない人でも、ほのぼのとして楽しめる内容です。もちろん、読んで楽しむだけでなく、古本屋に行ってみたくなります。
 これを読んでから、本に対する目線が変わってきました。すっかり影響され、師匠がつい買ってしまうという本の紹介に従って、黒柳徹子の「トットのピクチャー・ブック」を早速購入してしまいました。105円で……。はじめの心得で「わたしはわたしの風邪をひく」とありました。これは、自分の趣味・興味・関心に基準をおけということですが、なにぶん初心者ですから、はじめはこれくらいの気楽さでいいのかもしれません。

▲TOPへ戻る

福井雅子

評価:星4つ

 師匠・岡崎武志の指南を受けながら弟子・角田光代が古書店めぐりをして古本道を究める過程を、弟子と師匠の交互の手記で追う形の古書道入門ガイド。一緒に古本屋街を探索しているような高揚感を味わえるのがなんとも魅力的。
 この本が、今までに読んだいくつかの古書道についてのうんちく本と違うのは、すでに古書店通いを楽しんでいる中・上級者向きではなく、初心者と、「本は好きだけれど古本屋はどうも入りにくくて……」と思っている「入門者予備軍」向けに書かれている点だ。その入門者予備軍の一人である私は、途中からいてもたってもいられなくなり、すぐにでも神保町古書店めぐりの旅に! という気持ちになった。これって、デパートやショッピングモールの夏のバーゲンの広告を見たときの気持ちに似ているような……。この本、「日本古書店協会」(そんなものがあれば、の話)か何かのPR本なのでしょうか?
 本好きだけれど、古本屋はどうも入りにくくて……という方に、是非おすすめです!

▲TOPへ戻る

余湖明日香

評価:星4つ

就職をして初めての、横浜での一人暮らし。仕事で有隣堂、紀伊国屋、ジュンク堂などを見て回るほかにも、休みの日には、『東京ブックストア&ブックカフェ案内』(交通新聞社)を片手に東京の本屋を歩き回った。六本木、新宿、青山、自由が丘、渋谷…。北海道にはない本、北海道にはない本屋の世界、それぞれの「町」の色があること。カルチャーショックの連続だった。
あのとき、この本と出合っていたら、新刊書店にしか寄らない私も、古本と古本屋の世界に今頃どっぷり浸かっていたかもしれない。
好きな作家である角田光代さんが、岡崎武志さん(古本道場の道場主という設定)の指令を受けて、様々な町でお題を出されて、古本屋を巡る。最初は恐る恐る入った古本屋。そこで古本を探す楽しみを、値段のことを、書店ごとの違いを、本と本との不思議な出会いを、そしてやはり「町」の存在を知っていくのだ。
もう、古本屋に出かけたくてたまらなくなってしまう。そんなわくわく感に加えて、角田さんの読書生活を知ることが出来たのも楽しい一冊だった。

▲TOPへ戻る

<< 課題図書一覧>>