『ジョン・ライドン新自伝 怒りはエナジー』ジョン・ライドン

●今回の書評担当者●文教堂書店青戸店 青柳将人

  • ジョン・ライドン 新自伝 怒りはエナジー
  • 『ジョン・ライドン 新自伝 怒りはエナジー』
    ジョン・ライドン,田村 亜紀
    シンコーミュージック
    6,838円(税込)
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 今年も梅雨明けと共に音楽の祭典が全国各地で開催される。
 しかし私にとって今年一番のニュースだったのは、ボブ・ディランの来日でもマイブラのソニックマニア出演でもなく、パブリック・イメージ・リミテッド(以後PiL)の来日公演が7月に行われる事だ。

 本書には、そのPiLのフロントマン「ジョン・ライドン」の魅力が余すところなく詰め込まれている。

 ジョンは70年代、PUNKの代名詞としても用いられる程に有名なセックス・ピストルズ(以後ピストルズ)のヴォーカルで、「腐れジョニー」こと「ジョニー・ロットン」という名前を誰もが一度は聞いた事があるのではないだろうか。

 ピストルズの解散後、ジョンはPiLを結成し、民族音楽を中心に様々なジャンルをロックに取り入れ、他の追随を許さない独創的なサウンドで世界中のファンを魅了し続けているのだ。



 本書はジョン自らが執筆していて、髄膜炎で記憶を失う程の後遺症に悩まされた幼少時代から始まり、結成から瞬く間にイギリスのロックシーンの頂点に上り詰めたピストルズの壊滅。そしてPiLの結成に至るまでやピストルズ再始動とソロデビューまでの経緯。ピストルズの仕掛け人マルコムと長年争ってきたピストルズ裁判等、今まで雑誌やメディアのインタビューで語られる事の少なかった事柄についても仔細に語られており、ロック史においても非常に貴重な文献になるだろう。



 そして音楽の話だけでなく、俳優、タレントとしての活動や、イギリスの社会情勢についても独自の理論を述べ、家族や友人等に関する非常にプライベートな話についても包み隠さず語られた、非常にバラエティーに富んだ読み応えのある一冊になっており、本書の冒頭から巻末に至るまで、ジョンの一貫した人生哲学に基づいた、力強い言葉に満ち溢れている。

 その力の源はどこからやってくるのだろうか。答えは既に本書の副題に記されている。

「怒りはエナジー」

 この言葉はジョンの力の源であると共に、PiL屈指の名曲「Rise」の中で、ジョンが「怒りは時にエナジーになって、俺を目覚めさせてくれるんだ」と高らかに歌い上げる有名な一節だ。ピストルズ時代から、現在のPiLに至るまで、ジョンの行動原理はこの言葉に帰依すると言っても過言ではない。

「Rise」という曲は他の楽曲に比べてもジョンの歌声が突き抜けて明るく、そして爽やかで、「新しい時代がやってくる。生まれ変わるチャンスなんだ」、「あなたの(私の)進む道が正しくありますように」といった、前向きで希望に満ちた歌詞で溢れている。

 実際にジョンはこの「Rise」で世界中に悪名を轟かせた元ピストルズの「ジョニー・ロットン」という世間からの色眼鏡から開放され、アーティストとしての実力を世界に知らしめ、真の自由を手にしたのだ。

 今年40周年を迎えるPiLは、ドキュメンタリー映画公開予定もあり、今年様々な方面から注目され、世界各国で再評価され始めている。

 ジョン、あなたが歩み貫いてきた信念は、間違いなく正しかった。

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文教堂書店青戸店 青柳将人
文教堂書店青戸店 青柳将人
1983年千葉県生まれ。高校時代は地元の美学校、専門予備校でデッサン、デザインを勉強していたが、途中で映画、実験映像の世界に魅力を感じて、高校卒業後は映画学校を経て映像研究所へと進む。その後、文教堂書店に入社し、王子台店、ユーカリが丘店を経て現在青戸店にて文芸、文庫、新書、人文書、理工書、コミック等のジャンルを担当している。専門学校時代は服飾学校やミュージシャン志望の友人達と映画や映像を制作してばかりいたので、この業界に入る前は音楽や映画、絵、服飾の事で頭の中がいっぱいでした。