『調理場という戦場』斉須政雄

●今回の書評担当者●旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ

  • 調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)
  • 『調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)』
    斉須 政雄
    幻冬舎
    660円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

いらっしゃいませ。
2年連続の「GWに臨時休業」という、危機的状況を乗りきりました。礒部です。

実は、この原稿を書いている今、まさに休業中です。
乗りきれていますように......の、"乗りきりました"宣言です。

そんな現在、ずっしり重く暗い気持ちの私が、手に取った一冊。

「調理場という戦場」

この本を初めて手に取ったのは、入社4年目。
仲良くしてくれていた先輩が「わたし、この本めっちゃ好きやねん」と見せてくれたのですが、素敵な表紙に惹かれ、真似してこっそり買って読んでみることに。

軽い気持ちでのんびり読み始めたところ、開始2ページで方頬をひっぱたかれました。

都内にあるレストラン『コート・ドール』のオーナー、斉須政雄氏が書かれた本書。

若くしてフランスへ単身渡り、今もなお第一線で活躍する斉須さん。
斉須さんの人生を通して、斉須さんが出会った人、その人から学んだことや、ご自身の考えが圧倒的な熱さをもって、綴られています。

フランスの厳しい世界で生き抜いたからこそ紡がれる言葉が、とにかく全身に刺さり、私をアツくさせました。

私は今まで、何回も何回も、『仕事にアツくなって何があかんねん』と思ってきたし、当時は、特にそういった沸々とした思いが強く、どこか焦る気持ちがあったのかもしれません。

もしかしたら、今の世の中には少し受け入れられにくいことも書いてあるかもしれない。
けれど、プロフェッショナルというものはこういうものなんだと、強烈に心に刻まれました。

経験を積むことで、成長し、なりたい自分や環境に近付くことができる。
毎日をただなんとなく生きているだけではだめだ。
自分なんて、まだまだだ。

そういったことを思い知りました。

それだけではなく、本書のなかでは、「若い人を引き上げてやれる自分になりたかった」と仰るように、マネジメントについても書かれていたりと、どの世代が読んでも参考になることが詰まっています。

私がこの本を本棚から抜き出し、何度も読み返すのも、当時の気持ちを忘れたくないからであり、確認するためでもあります。
私は元来弱い人間で、流されやすいし、クヨクヨすることがままあるのですが、この本に叱咤され、勇気をもらっています。

そして、読むごとに、感じることや、目につく言葉も違います。

斉須さんは言います。

「窮地に陥ってどうしようもない時ほど、日常生活でやってきた下地があからさまに出てくる。それまでやってきたことを上手に生かして乗りきるか、パニックになって終わってしまうか。(中略)イザという時にあきらめることはないか。志を持っているか。」

こうしちゃいられない。
こんなことで挫けている場合じゃない。
まだまだやれるぞ。

なんだか心が燃えてきて、仕事がしたくてたまらなくなってきました。

これもいい経験。
きっと、乗りきります。

そしていつか、『コート・ドール』で、お食事を。その時は、心から楽しめる、恥ずかしくない自分でいられるように、今日も頑張ります。

« 前のページ | 次のページ »

旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ
旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ
1983年大阪生まれ。4年前に関東へ嫁いできました。今は池袋で働いています。慣れない東京、恋しい大阪。なんでスーパーにたこ焼きソースが置いてないねん。と泣きながら、今日も山手線で出勤します。