『ざつ旅 ーThat's Journeyー』石坂ケンタ
●今回の書評担当者●ゲオフレスポ八潮店 星由妃
旅に行きたい。海外じゃなくて良い。国内でいい。
新型コロナの影響で旅行に行きたくてもいけない。
そんな時、本の表紙につられて手にしたのが石坂ケンタさん KADOKAWAの『ざつ旅-That's Journey-』だった。
このコミックは主人公・鈴ヶ森ちか名義のTwitterアカウントで「もういっそ旅に出ます! 東京からどっちに向かえばいい? 上の方・右側・左側、下の方?』と適当にアンケートを取り「ざつ」に目的地を決める。
リツイートされることでアンケートに票が集まり有言実行せざるを得ない状況になるしくみだ。
実際に全国を「ざつ旅」した様子をちか目線で描いた読者参加型のコミックで旅行の出発点である東京駅には旅先のスポットをポスター掲出し舞台になった観光地もコラボ企画している。
コミックの帯には
1巻『「ここではない、どこか。そこに私が待っている。』
2巻『旅は、ざつでいい。ざつがいい。』
3巻『〜また、行きます』
4巻『「いままで」から「これから」へ』
5巻『明日もちょっといい日になる』
コミックの表紙なのに、まるで旅行会社の観光案内ポスターのようで旅心に火をつける。
「旅に出たい!」誰でも一度は思ったことがあるだろう。
しかし、旅を阻止する事が多過ぎる。普段の生活、仕事、学校、人間関係など。
今は新型コロナだ!
旅行どころか里帰りすら我慢しなければならない1年だった。
やはり手っ取り早く気持ちをリセットするには旅をするのが1番! それなのに旅が出来ない!
心が疲れてるとき、ちょっと環境を変えたい。
「ざつ旅」は各地の観光地をゆる〜く掲載しており、訪れた場所が休業でも「ざつ旅現象」として入れなかった様子を記念に写真を撮りファンがTwitterなどに投稿し楽しんでいる。
3巻の第12旅はなんと私の出身地の岩手県花巻市!
「またマルカン食堂の10段ソフトクリームを箸で食べたい!」と思いながら読んだ。思えば私はソフトクリームは箸で食べるのが常識な花巻人だった。他の地域で食べたソフトクリームは美味しいがソフトの巻が物足りないしスプーンだと上手く食べられなく落としてしまうほど柔らかいのだ。やはりソフトクリームは箸で食べたい!
小さい時から引っ越しが多く両親も他界している為、故郷の花巻市には行く事もなくなったが、まさかコミックで故郷を思い出す事が出来るなんて思いもしなかった。
4巻 コロナの影響で県を跨いでの往来を自粛するためにコミックの内容も東京都内、青梅市などが舞台になっている。身近な場所を「旅する」目線で描かれていて知らなかった東京を歩きたくなった。
5月末発売の5巻は茨城の常陸太田、大分の中津などでなるべく公共の乗り物ではなくバイクに替えるなどして旅を楽しんでいる。
スケジュールびっしりの計画的な旅もいいけど「ざつな旅」だからこそ見える景色もある。
読み終わると『どこでもいいから旅に行きたい!』と心から叫びたくなるコミックです。
- 『きのうのオレンジ』藤岡陽子 (2021年5月17日更新)
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- ゲオフレスポ八潮店 星由妃
- 岩手県花巻市出身。課題図書は全て「宮沢賢治作品」という宮沢賢治をこよなく愛する花巻市で育ったため私の読書人生は宮沢賢治作品から始まりました。小学校では毎朝、〔雨ニモマケズ〕を朗読をする時間があり大人になった今でも読んでいて素敵な文章があると発声訓練のごとく、つい声を出して読んでいる変な書店員です。