『花の慶次』隆慶一郎(原作)、原哲夫(漫画)、 麻生未央(脚本)
●今回の書評担当者●ふたば書房京都駅八条口店 宮田修
前田慶次郎利益
『花の慶次』の漫画で有名ですが私も漫画から入りました。
週刊少年ジャンプ世代でもあるので、毎週楽しみにして読みました。
原作者として隆慶一郎さんが、クレジットされていて、『一夢庵風流記』を読みました。これが滅法面白い。『影武者徳川家康』にも痺れました。
そもそも、前田慶次は、歴代の歴史作家の題材になっているので、創作意欲をかきたてる人物だったんでしょう。海音寺潮五郎先生、村上元三先生、南條範夫先生、花の慶次以後だと、近衞龍春先生、佐々木功先生などが、すぐに思い浮かびます。
今、読めないのも多く残念ですが。
『一夢庵風流記』を読んで、隆慶一郎先生に、オファーを出した時の編集エピソードがよくて、それで生まれたのが読切漫画松風との出会いを描いた歌舞伎御免のエピソード。
原作の面白さ、脚本のオリジナルストーリー、漫画のキャラクターとまさに三拍子揃った傑作です。
敵も味方も、男も女もまさに誰もが惚れる男前田慶次。
最近読んだ本だと『五葉の祭り』(今村翔吾/新潮社)の大谷刑部もまさにそんな人物として描かれていました。
エピソードの宝庫で、奥村助右衛門との友情、聚楽第での対面、直江兼続との出会い、佐渡ヶ島、百万石の酒等思い出すだけで、また読み返したくなります。
全てのキャラクターを生かしきっての大団円は、圧巻。
5年間の短い期間を風のように駆け抜けた隆慶一郎先生の小説も是非読んでいただきたい。
前田慶次の旅は、まだ終わらない。
後継作として『前田慶次かぶき旅』が、今も連載されています。
戦国オールキャスト的な展開になっていますが、こちらもおすすめです。
- 『大阪』岸政彦、柴崎 友香 (2024年10月24日更新)
- 『またうど』村木嵐 (2024年9月26日更新)
- 『臨床のスピカ』前川ほまれ (2024年8月22日更新)
- ふたば書房京都駅八条口店 宮田修
- 高知県生まれ、大阪在住。他書店から、2020年よりふたば書房入社。好物は、歴史時代小説、ミステリですが、ジャンルは、問いません。おすすめありましたらお願いいたします。好きな作家さんは池波正太郎先生。