『ありか』瀬尾まいこ
●今回の書評担当者●ふたば書房京都駅八条口店 宮田修
人は居場所を求めてしまう。
自分がいていい場所、心の拠り所を探してしまう。
それが見つからないと、疲弊してしまう。
居心地がいいから、このグループにいないと駄目だからでも、それは本当は違うのではないか。
自分が守りたいもの、愛しいものがいる場所こそ、あなたのありかではないだろうか。
母親にどうしても本当の気持ちを伝えられなかった彼女が、子供とのやり取り、元義理の弟、同僚、ママ友、日常の生活のなかで、関わった人達の優しさに触れ、成長していく姿が、心地良い。
皆いろんな思いを抱えて生きている。
その人たちも、過去に自分のしたかったこと、してあげたかったこと出来なかったことが、ベースにあるから、手を差し伸べてくれたりするのはある思うが、それだけではなく、そこには、彼女頑張りを見ていたから何かしてあげたいとの真心があると思う。
今まで見えていなかったことに、手を差し伸べてくれていることに気付き、見返りや依存でもなくただ差し伸べられた手を握ることが、手を貸してもらうことが出来るようになる。
それは、自分の気持ちを意思を解放させることになる。
その差し伸べられた手を違う形で、また別の誰かに自分が出来るようになれればと思わせてくれる。
読み終えたあとに、こころがぽかぽかした状態で周りをみまわして、自分のありかを是非見つけてほしい。
書きたいのは、まだありますが今回で最後なので、もう1冊紹介させて貰います。
伊東潤先生の原作を、幾花にいろ先生がコミカライズ。
今川氏真とお抱えの蹴鞠師の話です。
長編はいつも新しい視点を見せてくれますが短編でも惜しみなく、それを投入して切れ味の鋭さを見せてくれます。
幾花先生の絵と上手くハマっていて私が好きな「城を噛ませた男」「江雪左文字」も、コミカライズしてほしいと思ってしまいました。
まだ出てなくて、読めていないのですが、5月8日予定で、新競馬シリーズが帰ってきます。
早川書房ではなく、文春文庫で。
装丁や、背表紙が緑とハヤカワ文庫競馬シリーズの横に並べても違和感がないというリスペクト振り。
勿論、タイトルも漢字二文字。
著者は、息子のフェリックス・フランシスさん。
訳者も、加賀山卓郎先生。
なんと言っても主人公がシッドハレーです。
大穴、利腕、敵手、再起に続いての5度目の登場。
もう、期待しかありません。
今は、残念ですが1作目の大穴のみ読める状態です。
これを機会にシリーズが復刊すれば嬉しいですね。
新競馬シリーズ『勝機(仮)』、『虎口(仮)』の2作は発売が決まっているそうですが、あとも、コンスタントにだして欲しいですね。
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- ふたば書房京都駅八条口店 宮田修
- 高知県生まれ、大阪在住。他書店から、2020年よりふたば書房入社。好物は、歴史時代小説、ミステリですが、ジャンルは、問いません。おすすめありましたらお願いいたします。好きな作家さんは池波正太郎先生。