『円かなる大地』武川佑

●今回の書評担当者●ふたば書房京都駅八条口店 宮田修

  • 円かなる大地
  • 『円かなる大地』
    武川 佑
    講談社
    2,695円(税込)
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目を瞑るな、声を聴け、この現実に抗う術を、私はもっている。

稲が、聞いて知っていたことは、ただ知っているだけだった。 
他人事としか思っていなかった。

実際に、過酷な現場を目撃して打ちのめされ、声を上げようとする。
戦を止めるには、永久の平和とは。
そのために、何が出来るのか、何をしなければならないのか煩悶し、動き出す稲。
その無垢なる叫びに、共感していく仲間たち。

そして、残されたのは一縷の望み。
それは、安東家当主を立会人として、連れて帰ること。
タイムリミットは、15日。

数多の困難を乗り越え、辿り着いた館での、死闘。
過去からの因縁が、結んだものか各人が、対峙する過去現在と未来。

エンタメとして、一気読みです。
稲の人形と思っていた自分が自分で考え、何をすることができるのか悩みながら、戦う武器を、手に入れる、成長していくさまが、頼もしいとともに、とこしえの平和の約束のために、家族にも、鬼となって糾弾していく。
凛とした美しさが際立つ。

テーマは重い。
私達は、アイヌの歴史をもっと知らないといけない。
今なお続く戦争。
とこしえの平和のための円かなる大地を、手に入れるために私達は、他人事にしてはいけない。

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ふたば書房京都駅八条口店 宮田修
ふたば書房京都駅八条口店 宮田修
高知県生まれ、大阪在住。他書店から、2020年よりふたば書房入社。好物は、歴史時代小説、ミステリですが、ジャンルは、問いません。おすすめありましたらお願いいたします。好きな作家さんは池波正太郎先生。