『サバイブ!』岩井圭也
●今回の書評担当者●BUNKITSU TOKYO 成生隆倫
【成生賞】というものがある。
書店員・成生隆倫が一年間に読んだもののなかで、最も胸にぶっ刺さったものを紹介する企画だ。
選考基準は、エネルギーが満ち溢れ、前向きな気持ちになるもの。心が温かくなるというよりも、気合とか根性とかガッツとかファイトとか、そういう精神論的強さが漲ってくる作品を選んでいる。
そして2025年12月。 俺は【第4回 成生賞】を発表した。
岩井圭也さん著の『サバイブ!』である。
絶望から這い上がるための勇気、生き残り続けるための努力に満ちた、泥臭い傑作だった。
「これは売りたい、売らねばならぬ!」
プルーフを読んだ段階で、すでに強い克己心が芽生えていた。
しかし今年の7月、事件は起きる。勤めていた書店を突如、退職してしまったのである。(理由は伏せる) 幸いにも、次の職場はすぐに決まった。ただ、オープンはそれから約1ヶ月半後であった。
『〇〇フェアを作った』『拡材にコメントが載っている』など、書店員さんのSNS投稿が無職男性32歳の心にグサリグサリと突き刺さる。
インパクトのあるPOPを作成したり、目に見える数字を残すことで書店員のアイデンティティを保っていた俺には、かなり堪える時期であった。
「俺、業界の方々から忘れられちゃうのではないだろうか......」
新しい職場で文芸に携われるという保証はないし、今までのような輝かしい記録を生み出せるかどうかもわからない。
あれだけ推したかった『サバイブ!』も、いつのまにか発売されてしまい、現場での盛り上がりに加勢できないのが本当に歯がゆかった。
また、仕事内容が大きく変わり、かつてのようなスタイルで、文芸作品を売ることはできなくなった。
そして、展開機会のないままオープンを迎え、そのまま流されるように現在も、慌ただしい日々に身を投げ続けてしまっている。
でもこのまま終わりたくはない。あのとき克己心についた炎は、まだしぶとく燃えているのだから。
SNSでただ感想を述べているだけじゃ物足りない。
書店員の醍醐味は、最高だと思った本を売ること。
今後、自身が書店員として生き残り続けるためにも、ここで簡単に引き下がっちゃいけない。
そう、俺は、『サバイブ!』を売りたいんだ。
難病を乗り越え、サバイバーズを立ち上げたコタローの覚悟と情熱に胸を打たれたから。
仲間たちと目標に向かって突き進むという、少年漫画的な展開に心が震えたから。
俺がこの作品にこだわる理由は、きっとそれだけじゃない。
己の魂が燃えた物語を、自分の手で売れなかったことがとんでもなく悔しかったのだ。
誰かが売ってくれればそれでいい、なんて達観できなかったからなのである。
俺は諦めない。
絶対に売ってみせる。
そんな激しい執着を抱いた作品はなかなかない。
【成生賞】は所詮、小さな個人賞だ。
でも、書店員として生き残るために、この業界でゆるぎない居場所を確保するために、俺は全力で【成生賞】に情熱をのせ続けていく。
いざ、I will survive.
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- BUNKITSU TOKYO 成生隆倫
- 立命館大学卒業後、音楽の道を志すが挫折。その後、舞台俳優やユーチューバーとして活動するも再び挫折し、コロナ渦により飲食店店員の職も失う。塾講師のバイトで繋いでいたところ、花田菜々子さんの著書と出会い一念発起。書店員へ転向。現在は書店勤務の傍らゴールデン街のバーに立ち、役者業も再開している。座右の銘は「理想はたったひとつじゃない」。

