『マニア流!まちを楽しむ「別視点」入門』合同会社別視点

●今回の書評担当者●丸善博多店 脊戸真由美

  • マニア流!まちを楽しむ「別視点」入門
  • 『マニア流!まちを楽しむ「別視点」入門』
    合同会社別視点
    学芸出版社
    2,200円(税込)
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石川県にある「ヤッホー」しか喋らない茶漬屋。繁華街のほど近くにある、老夫婦2人で経営する人気のお店で、店主の夫婦が「いらっしゃいませ」の代わりに大きな声で「ヤッホー」と叫ぶところからスタートする。メニューは「なめこ茶漬」や「鮭茶漬」といったオーソドックスなラインナップだが、茶漬を運んでくる時も「ヤッホー」と言いながら持ってくる。おかずが残っていればご飯のお代わりは自由だが、お代わりしたい時は客側も「ヤッホー」と手を上げなければならない。

「日常に潜むミステリー」別視点。

 先日、レジで会計を終えたお客さんから、変なことを聞くようだけど、と切り出され、クレームか?と身構えると「ビッグカメラとヨドバシカメラはどう違うのかしら」だった。畳んだ紙を手渡され、広げてみると、本の注文用紙ではなく、クリスマスケーキの受け取り控えだったこともある。ここじゃないの?と言われた。

 ユーはなにしに本屋へ?と聞きたくなるが、その人たちにはそう見えてるのだ。

 毎朝、お店を開ける前は、手分けしてモップではわく(掃く)まずは埃の山。ペットボトル、ポップコーン(上の階が映画館)たこ焼きの舟に、ストローが刺さった芋の絵の紙パック(芋ジュース?と思ったら芋焼酎)がどんどん添えられ、即席の事故現場が出来上がる。ネイルの爪はホラー度がグッと上がる(けっこう落ちてる)事故度が高い日はうれしくなる。写真に撮りたい。

「別視点」マニア名鑑。活動時の「3種の神器」それは、マニアというよりもプロ!と呼びたくなるものだ。そこのスタッフ全員に、行き届く数を想定した個包装の手土産(バックヤード探訪プロ)1日乗車券は酷使してると、改札機に通らなくなることもある(駅で見られる手作り案内表示「野良サイン」収集プロ)窓口で言えば交換してもらえるそうだ。マンガ喫茶に80泊以上して、ちょっと変わった観光地や飲食店を追い求めるプロ。火曜サスペンスにでてくる死体のような写真を撮る「火サス」プロ。悲壮感がなく、苦しまずに死んだように見えるのが美で、犬神家のような逆立ちポーズもするが、あまり筋肉ムキムキにならないよう、不健康で薄幸感がでる体をキープしているのだとか。

 総じて文化系。体力自慢じゃなさそうな「別視点」マニアの方々。お金は基本使ってなさそう。薄給書店員の目が光ったのはそこである。

 最近の地元ニュース。地下鉄にて、乗車した料理人が持ってた包丁の柄が袋から丸見えだった。通報→確保→地下鉄止まる。そのすこし前も、業者が持ってた刃物で、博多駅が騒然。

 その昔、実家にいた頃。風呂に入っていた時のこと。突然、ピンポンが連打され、セトさーん!という大声。その後、ドヤドヤと家にたくさんの人が入ってくる音が。母が父を刺し、通報したのだ(ほんのかすり傷)深夜、警察から電話がかかってきて、身元引き受けに行く。証拠品の柳刃包丁を持って帰って、と渡されたのだが、手ぶらで来たので、ハイとそのまま持つ。それを見たお巡りさんが、虎屋の紙袋をくれた(やさしい)だが、だいぶはみ出していて、さらにカチコミ感が上がった。絵面が‥と思われたのか、ちょうど巡回の時間だから、とパトカーで家まで送ってもらった思い出。

 そんな修羅の国よりお届けしています。山笠の季節です。

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丸善博多店 脊戸真由美
丸善博多店 脊戸真由美
この博多の片隅に。文庫・新書売り場を耕し続けてウン十年。「ザ・本屋のオバチャーン」ストロングスタイル。最近の出来事は、店がオープン以来初の大リニューアル。そんな時に山で滑って足首骨折。一カ月後復帰したら、店内全部のレイアウトが変わっていて、異世界に転生した気持ちがわかったこと。休日は、コミさん(田中小実昌)のように、行き先を決めずにバスに乗り山か海へ。(福岡はすこし乗るとどちらかに着くのです)小銭レベルの冒険家。