『妖狐×僕SS』藤原ここあ

●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織

  • 妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス) 1 (ガンガンコミックスJOKER)
  • 『妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス) 1 (ガンガンコミックスJOKER)』
    藤原 ここあ
    スクウェア・エニックス
    460円(税込)
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 フン、またお目にかかるとはな。
 お読みくださりありがとうございます。

 と、ツンシュンな主人公・凜々蝶風味で始めさせていただきました今回の推し本は『妖狐×僕SS』です。

 私が現推しと出会うきっかけになった尊い作品でございます。

 まずは、あらすじをご紹介。

 第一章は、寂しさによる虚勢からつい悪態をついてしまう凜々蝶が、高校入学を機にSS(シークレットサービス)付きの超高級マンション『妖館』の住人となるところから物語が始まる。『妖館』の実態は純血の妖怪から狙われやすい先祖返り達が住まう秘密のマンション。一人になるために引っ越してきた凜々蝶だが、「主の犬」を自認する双熾がSSに付き、徐々に『妖館』の住人と馴染んでいく。人と関わる勇気、仲間、そして恋...。少しずつ手に入れた宝物が、百鬼夜行に突然奪われる。

 第二章は、百鬼夜行から23年後。生まれ変わった凜々蝶たちは、前世と近しい人生を歩みながらまたまや出会う。前世の記憶のある者もいれば、ないものもいる。ただ、生まれ変わっても変わらない業ー。その人をその人たらしめるものとは。そして百鬼夜行に隠された意味とは。前世とは少しずれのある世界で凜々蝶たちは、百鬼夜行を阻止しようとある決意をする。

 最終章では、第二章の凜々蝶たちの決意により、第一章のある時点から物語が再スタートすることになる。果たして、凜々蝶たちは新たな物語が紡げるのかー。

 あやかし系・タイムリープと人気ジャンルである上に、それぞれのキャラが生まれ持った業や、それを昇華していく様が描かれている。

 家柄で寄ってくる人たちの嘘により、人を信じることができず虚勢で自分を守るようになってしまったが、その悪癖に苦しむ凜々蝶。
 幼少期軟禁され、自身の美しさで権力のある女性に取り入り家から出た過去から自分を汚らわしいと卑下する双熾。
 双熾の元主人であり、凜々蝶の元許嫁である蜻蛉は、マントに仮面という出立ちをし、人々を自分のペースに巻き込んで行くが、内面はとても優しく前向きである。
 双熾と蜻蛉の幼馴染の残夏は、一見チャラいお兄さんであるが、その実自身の能力(百目)で視えてしまうことを自身で抱えたりと仲間思い。
 上記以外も魅力的なキャラばかり!

 それぞれの思いに、いろいろ考えるところも出てくるこの作品。きっとあなたの内なる悩みを分かち合えるキャラもいるはずです。ぜひ一読してください。

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山下書店世田谷店 漆原香織
山下書店世田谷店 漆原香織
『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。