●担当者●ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理

2020年4月9日更新

『彼女の知らない空』早瀬耕

 あなたにとって、何ものにも変えられないもの、守りたいもの、守りたい人はありますか。  今起きているかもしれない、起こりえるかもしれない黒く塗りつぶされた世界がどこまでも続くこの空と繋がっているかもし... 記事を見る »
2020年3月12日更新

『古くてあたらしい仕事』島田潤一郎

 私は書店員だ。書店員でなかったら、何の仕事をしていただろう。  本屋さんで本を選ぶのが好きだからそういう幼い頃の自分の気持ちが後押しをして、この仕事をしているような気がする。  そんな自分に本書は今... 記事を見る »
2020年2月13日更新

『最高の任務』乗代雄介

 心に住みついた揺さぶる想いが開放してくれない。文章がかけた魔法のような美しい情景が立ちのぼり、至福の感情に満ち溢れる。 本書は私・景子が大学の卒業式以後のいつかの時に日記として書いたもので、過去の事... 記事を見る »
2020年1月16日更新

『月まで三キロ』伊与原 新

 一日が終わる。そう思いだしたくもない問題が起こり、自分のふがいなさに自己嫌悪、心が疲弊した夜、この本のページをめくる。何度ページをめくっただろう。  何度、人にこの本のことを話しただろう。誰にもお薦... 記事を見る »
2019年12月12日更新

『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真

 子どもが父親を越える、その時父親は何を思い、子どもは何を見つめるのだろう。  継承、希望を次の時代へと継承する。過去から未来へ、昨日から明日へ。  私たちは継承という厳しくて、包容力がある世界を本書... 記事を見る »
2019年11月14日更新

『罪の轍』奥田英朗

 3年前、ノンフェクションの名著、本田靖春著『誘拐』を読み、吉展ちゃん誘拐殺人事件を知った。事件の全容、捜査、世相はもちろんのこと、犯人の生い立ちから徹底的な取材を積み重ね、淡々と書かれた文章は、重厚... 記事を見る »
2019年10月10日更新

『わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい』鴨居羊子

 このタイトルの情景を思い浮かべてみる。何か夢の出来事が起こり、見果てぬ世界へ誘われる予感が。  ある出版社の方から、ぜひ読むべき名作として紹介された本である。 新聞記者から転身、1955年「チュニッ... 記事を見る »
2019年9月12日更新

『掃除婦のための手引書』ルシア・ベルリン

 自身の波乱万丈の生涯が綴られた本に触れた時、その熱にのみ込まれて、魂まで奪い取られ、放心状態になることがある。それが読書の醍醐味、人の生涯に侵入するということはそういうことだと疑っていなかった。この... 記事を見る »
2019年8月8日更新

『夏物語』川上未映子

 ふとした時に思いだす、あなたはどう思うの? と。いやずっと自分に問いかけ続けているのだ。それは冷たいものでなく、温かさを持った問いかけである。 想いを綴るのは、川上未映子の全身全霊をかけた魂の世界ゆ... 記事を見る »
2019年7月11日更新

『逃げ出せなかった君へ』安藤祐介

 現在、日本では働き方改革が推奨されている。小説では『わたし、定時で帰ります。』がより良き働き方を訴え、断固と立ち向かう女性が泣き笑いの奮闘をし、自分たちの道を切り開いていく様が、共感を得て、大ヒット... 記事を見る »
2019年6月13日更新

『トリニティ』窪美澄

 1960年代、高度経済成長期、女性の大半が結婚・出産を機に退職し、専業主婦となっていた時代。こんなに熱く生き抜いた女たちがいた。  トリニティとはキリスト教における三位一体を意味する。男・仕事・結婚... 記事を見る »
2019年5月16日更新

『歪んだ波紋』塩田武士

 間違った情報の拡散がもたらす怖い世界を想像したことがありますか。自分がその被害者になったり、安易なSNSでの拡散で加害者に加担したりすることです。  本書はそんな恐ろしい世界を思い起こさせる連作短編... 記事を見る »
ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理
ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理
生まれも育ちも京都市。学生時代は日本史中世を勉強(鎌倉時代に特別な想いが)卒業と同時にジュンク堂書店に拾われる。京都店、京都BAL店を行き来し、現在滋賀草津店に勤務。心を落ちつかせる時には、詩仙堂、広隆寺の仏像を。あらゆるジャンルの本を読みます。推し本に対しては、しつこすぎるほど推していきます。塩田武士さん、早瀬耕さんの小説が好き。