作家の読書道 第280回:城山真一さん
2015年に『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』で第14回このミステリーがすごい!』大賞を受賞、その後ドラマ化もされた『看守の流儀』などで、ミステリーと人間ドラマを融合させてきた城山真一さん。小学生の頃はあまり小説を読まなかったという城山さんが、その後どんな作品と出会い、小説家を志すことになったのか。小説以外の好きなものも含めて、たっぷりおうかがいしました。
その6「小説を読みまくった30代」 (6/9)
――その後の読書生活は。
城山:30代になって金沢に戻ってきてから、小説を読みまくるようになりました。当時印象深かったものを挙げていきますと、まず、なんといっても横山秀夫さんの『半落ち』。人生ではじめて、小説を読んで泣きました。ここから順不同のオンパレードで挙げていきます。新堂冬樹さんの『カリスマ』。これはもうエネルギーが炸裂していてインパクトがありました。新堂さんはストーリーの描き方とか文章がとんでもなくうまいなあと思うんですよね。次は、池井戸潤さんの『鉄の骨』。談合って悪いことだという先入観があったんですけれど、『鉄の骨』を読むと善悪ってなんだろうと考えさせられる。それがこの小説のいいところだなと。次は、今野敏さんの『隠蔽捜査』シリーズ、これはなんといってもキャラクターが立っていますよね。主人公の理屈っぽいところが不思議と共感できたりする。次は、浅田次郎さんの『鉄道員(ぽっぽや)』。これも泣きましたね。大人の童話という感じで、あの短篇集のなかでは「うらぼんえ」という話がすごく好きです。ほかにも浅田さんでは『月島慕情』に収録されている「供物」という短篇も好きです。
次は、白川道さんの『天国への階段』。これは後でお話ししようと思っている僕の師匠から勧められた小説で、長いんですけれど長さを感じさせない面白さ。次は、北方謙三さんの『水滸伝』シリーズ。これは林冲という将軍が出てくるんですけれど、行動も台詞も格好よすぎて、本当に好きでした。北方謙三さんというと『血涙 新楊家将』という小説も大好きです。北方さんの小説って、いい意味で、漫画を没頭して読んでいる時のような気持ちになります。
次は、柳広司さんの『ジョーカー・ゲーム』。僕が『看守の流儀』を書いたのは、『ジョーカー・ゲーム』っぽいものを書きたいなと思ったのがひとつのきっかけだったかなと思っています。次は、雫井脩介さんの『犯人に告ぐ』。現実の世界では設定的にありえないのかもしれませんが、僕はああいうドラマチックなものを読むのが好きなので印象に残っています。最後は、金城一紀さんの『映画篇』。連作短篇集でそれぞれに繫がりがあって、最後にみんなが一堂に会する、みたいな。今回好きだった本を思い返して『映画篇』が浮かんだ時に、もしかしたら僕の『金沢浅野川雨情』の最後って、『映画篇』をちょっと参考にしていたのかもしれないと思いました。
――漫画作品はなにが好きでしたか。
城山:『闇金ウシジマくん』が好きでした。これは単にヤンキー漫画で描写がグロいとかそういうことだけではなくて、しっかりリアリティもあって、人間のエゴとか、悲しみとか、弱さとかいろんなものを丁寧に描き出しているのが、実はいちばん読ませるところなのかなと思います。














