作家の読書道 第282回:友井羊さん
2011年に少年が原告となるリーガルミステリ『僕はお父さんを訴えます』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞、翌年同作を刊行しデビューした友井羊さん。 その後『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』シリーズをはじめ料理ミステリで人気を博し、かと思えば実際の冤罪事件を扱った骨太な作品『巌窟の王』を発表。硬軟自在の作風はどのようにして生まれたのか。その読書遍歴や小説家になった経緯をおうかがいしました。
その2「漫画きっかけで小説を読む」 (2/9)

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――小説でも漫画でも、ミステリ系のものはお好きでしたか。
友井:自分では意識していませんでしたがミステリ系が好きだったようです。たしか小6の時に『金田一少年の事件簿』の連載が始まったので読んでいました。中学生の時、林間学校の空き時間に読むために小説を1冊持っていくことになっていて、僕はジャンプジェイブックスから出ていた我孫子武丸さんの『ぼくの推理研究』を持っていったんです。それが、はじめて自分でミステリを買って読んだ体験でした。
――ジャンプジェイブックスは、「ジャンプ」の漫画のノベライズや、ジャンプ小説新人賞の作品を出しているレーベルですよね。
友井:僕は本当にジャンプっ子だったので、「ジャンプ」に載っているジャンプジェイブックスの広告を見て、知っている漫画家さんが表紙を書いていたり、知っている漫画が小説になっていたりすると手を出していました。例を挙げると『封神演義』の作者がイラストを描いた『眠り姫は魔法を使う』というミステリが記憶に残っています。村山由佳さんの『もう一度デジャ・ヴ』も手に取りました。村山さんが『天使の卵 エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞する前に出した作品なんですが、調べてみたら第1回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作になった作品でした。そんな感じで、意識せずに現在も活躍されている作家の方の作品を読んでいた、ということが多いです。たとえば『MIND ASSASSIN』という漫画のノベライズもたまたま読んだんですが、それは『檜垣澤家の炎上』の永嶋恵美さんが別名義で書いたものでした。
――漫画から派生して小説も楽しむようになっていった、という感じですかね。
友井:そうですね。小説は本当に、漫画のついでという感じではありました。
――国語の授業などで、文章を書くのは好きでしたか。
友井:国語の授業は点数はよかったんですけれども、文章を書くのが得意という意識はまったくなかったです。なんなら長い文章を書くのは苦手なくらいでした。読書感想文も、なにを書いたか1ミリも憶えていないです。「面白かったです」みたいなことを書いた記憶しかありません。ただ、教科書に載っていた、すやまたけしさんの「素顔同盟」など大切な作品にも出会えました。
――振り返ってみて、ご自身はどんな子どもだったと思いますか。
友井:運動が苦手で社交的でもなく、気の合う友人と好きな漫画やアニメの話をして、わりとひっそりと過ごしている子ども時代でしたね。
――あ、アニメも結構見ていたんですか。
友井:みんな見ていましたから。それこそ「ドラゴンボール」とか。中3の時だったかな、「新世紀エヴァンゲリオン」が始まって、友人に勧められて見ていました。ただ、自分にとっては、アニメも順番でいうと漫画の次に位置づけされるエンタメでした。
――ゲームや映画など、他にはまったものはなかったのですか。
友井:ゲームはマリオとかドラクエといった、みんながやるようなものはやっていました。ドラゴンクエストは好きでした。映画は「ゴジラ対ビオランテ」とかは記憶に残っていますが、中学くらいの頃はこれが大好きだ、とまでいう作品はありませんでした。
――部活は何をやっていましたか。
友井:卓球部の幽霊部員です。
――このインタビューを続けていると、わりと元卓球部の方が多い気がします...。
友井:たぶん、部活に強制的に入らさせられるという前提があって、今は知りませんが僕の世代は文化部に入るのがダサいという謎の空気があったんです。それでも運動はしたくないので、ぱっと見ラクそうな卓球部を選択することになるという。僕は最初は部活に顔を出していましたけれど、途中で怪我をして辞めたこともあり、熱心な部員ではなかったです。
――小中学生時代、学校の図書室はよく利用していましたか。
友井:シャーロック・ホームズの本を借りたくらいで、頻繁に利用したわけではなかったですね。本は友人との貸し借りでまかなえていました。
書店も、中学生くらいまではコミックスを買いに行くくらいで、そこまで頻繁に行っていたわけではないんです。群馬県の高崎市出身なので、周囲に書店はいっぱいありましたが。
――高校は地元の学校に進まれたのですか。読書生活に変化はあったでしょうか。
友井:高校も地元で、自転車で通っていました。高校時代から、ちょっと読書が広がったんです。それまでは「ジャンプ」などの少年誌一辺倒だったんですけれど、「アフタヌーン」といった青年誌よりの漫画も読み始めました。
学校では漫画好きの友人がいなかったので、自分でコミックスを発掘する作業をしはじめたんです。ブックオフなどに行っては、気になるものを探すという。雑誌で読んで面白そうな作品があれば、第1巻から探していくとか。
それで『寄生獣』だったり、『ディスコミュニケーション』といった作品を探し当てていました。『精霊使い』も好きでした。『トライガン』という漫画は、連載していた雑誌が休刊したけれど人気だったので他の雑誌に移って、アニメ化もされたんですけれど、そういう漫画も手がかりなしで探しだしました。
雑誌で連載の途中から読むと、分からない情報がたくさんあるんですよ。その時に1巻から遡って読みはじめると、分からなかったものが回収されていく楽しみがあって、伏線回収のようで好きでした。途中から読んでいた時には主人公だと思っていた人が、実は主人公じゃなかったと判明することもあったりして。
――ミステリ系に限らず、いろんなジャンルを読まれていた感じですね。
友井:そうですね。『ディスコミュニケーション』はファンタジーですし、『トライガン』はガンアクションだし、あとは『勇午』という漫画も好きでした。これはアニメ化もされていて、交渉人が世界中をめぐって国際問題の交渉をする話でした。
――小説で印象に残っているものは。
友井:一応読んではいまして、実家の棚にあった夏目漱石を試しに読んでみるなどしました。『三四郎』や『それから』が面白かった記憶はあります。
それと、小説はジャケ買いしたりしていました。それで単行本の『パラサイト・イヴ』を買ったんです。書店にたくさん積まれていたんですよね。その頃は背伸びしたいとか、普段と違うことをしたい的な気持ちが強くて手にとったように思います。『パラサイト・イヴ』は面白かったんですけれど、そこから小説の読書が広がっていったわけではなかったです。





