第282回:友井羊さん

作家の読書道 第282回:友井羊さん

2011年に少年が原告となるリーガルミステリ『僕はお父さんを訴えます』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞、翌年同作を刊行しデビューした友井羊さん。 その後『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』シリーズをはじめ料理ミステリで人気を博し、かと思えば実際の冤罪事件を扱った骨太な作品『巌窟の王』を発表。硬軟自在の作風はどのようにして生まれたのか。その読書遍歴や小説家になった経緯をおうかがいしました。

その4「乙一さん作品にはまる」 (4/9)

  • カラフル (文春文庫 も 20-1)
  • 『カラフル (文春文庫 も 20-1)』
    森 絵都
    文藝春秋
    682円(税込)
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  • ぶたぶた【徳間文庫】 (徳間文庫 や 36-1)
  • 『ぶたぶた【徳間文庫】 (徳間文庫 や 36-1)』
    矢崎存美
    徳間書店
    680円(税込)
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  • おしまいの日-新装版 (中公文庫 あ 58-10)
  • 『おしまいの日-新装版 (中公文庫 あ 58-10)』
    新井 素子
    中央公論新社
    990円(税込)
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――大学時代、小説で印象に残っているものはありますか。

友井:さきほど『パラサイト・イヴ』の話もしましたが、高校卒業の頃から大学1年生の頃にかけて、本をジャケ買いしていた時期がありました。周りにそんなに小説が好きという人がいなかったし、情報を得る方法も分からず、といっても小説は未知の領域だったので、とりあえずジャケ買いするしかなかったんです。でも、なぜか当たりを引いていました。森絵都さんの『カラフル』とか。矢崎存美さんの『ぶたぶた』も廣済堂の単行本で買いました。
それと新井素子さんの『おしまいの日』。これはすごく影響を受けました。僕の『スイーツレシピで謎解きを』にメタフィクション的なアプローチがあるのは、完全に『おしまいの日』の日記のシーンの影響です。小説の中では何をしてもいいんだと気づかせてもらって、小説に対する認識が変わりました。あれを読んだ後で新井さんがライトノベル畑の方だと知って逆にびっくりしました。あとは、たまたま表紙を気に入って、米澤穂信さんの『氷菓』を角川スニーカー文庫〈スニーカー・ミステリ倶楽部〉版で買って読んだのもその頃です。
それと、大学1年生の時に、乙一さんの『夏と花火と私の死体』を読んだんです。「週刊少年ジャンプ」を隅々まで読んでいたので、受賞発表の記事で乙一さんの存在を知ってはいたんですが、読んだのはその時がはじめてだったと思います。

――ああ、友井さんは乙一さんの作品がお好きだと前からおっしゃっていますよね。じゃあ大学1年生の時に読んで衝撃を受けて......

友井:それが違いまして。衝撃を受けたのは大学4年の時なんです。4月に帰省した際に、移動の電車の中で読む用の本がほしいと思って乙一さんの『暗いところで待ち合わせ』を買って、はまったんです。そこで人生が変わりました。

――どういうところに惹かれたのでしょうか。

友井:弱い人間をそのまま肯定しているというか。自分のために書かれた小説だ、くらいに思った記憶があります。やっぱり今でも、乙一先生は自分の中では特別な存在です。
その後『GOTH』とか『ZOO』とかが出て、『QUICK JAPAN』で特集が組まれたりして、乙一さんが盛り上がっていった時期でした。それまでは漫画中心でしたが、そこから小説を読むという行為が日常の中に組み込まれた感じがあります。
乙一さんの他の作品はもちろん、他には本多孝好さんの『Missing』や、『キノの旅』などを読んだりしていました。
それと、「リリィ・シュシュのすべて」という映画にはまって、もとになった小説も買って読みました。もともと岩井俊二監督が好きで、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」もフジテレビのドラマ「if もしも」でたまたまリアルタイムで観たりしていたんですが、「リリィ・シュシュのすべて」でドはまりして、部屋にポスターを飾ったりしていました。

――あの映画も、弱い人間を肯定してくれるところがありますよね。

友井:そうですね。当時、そうした作品に救われた部分があります。自分も、そうしたものも描きたいと思っています。

  • スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 (集英社文庫)
  • 『スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 (集英社文庫)』
    友井 羊
    集英社
    814円(税込)
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  • 氷菓 (角川文庫)
  • 『氷菓 (角川文庫)』
    米澤 穂信,上杉 久代,清水 厚
    KADOKAWA
    572円(税込)
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  • 夏と花火と私の死体 (集英社文庫)
  • 『夏と花火と私の死体 (集英社文庫)』
    乙一
    集英社
    638円(税込)
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  • 暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
  • 『暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)』
    乙一
    幻冬舎
    649円(税込)
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  • GOTH 夜の章
  • 『GOTH 夜の章』
    乙一
    角川書店
    484円(税込)
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  • ZOO 1
  • 『ZOO 1』
    乙一
    集英社
    638円(税込)
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  • MISSING (角川文庫)
  • 『MISSING (角川文庫)』
    本多 孝好
    KADOKAWA
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  • キノの旅 the Beautiful World (電撃文庫)
  • 『キノの旅 the Beautiful World (電撃文庫)』
    時雨沢 恵一,黒星 紅白
    KADOKAWA
    671円(税込)
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