作家の読書道 第286回:伏尾美紀さん
2021年に江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作『北緯43度のコールドケース』がはじめて書いた警察小説だったという伏尾美紀さん。第4作となる『百年の時効』で大藪春彦賞と吉川英治文学新人賞受賞と、瞬く間に熟達ぶりをみせる書き手はどんな読書遍歴を辿ってきたのか。探偵小説、警察小説、ノンフィクションなど、現在の執筆活動に繋がる読書体験が見えてきました。
その3「警察ものの漫画やドラマにもはまる」 (3/8)

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――ところで、高校では部活は入っていたのですか。
伏尾:高校の時は、その読書好きの友達に誘われて美術部に入りました。その子は漫画も描けて、お昼休みに自分で創作漫画を描いているような子だったんですね。私は絵を描くのが好きというよりは、その子とお話がしたくて入部しました。そうしたら似たような内気な子たちがなんとなく集まっていたので、そういう子たちとずっと漫画とかアニメとか小説とか、あと音楽の話をして放課後を過ごしていました。
――漫画はどのあたりがお好きだったんですか。
伏尾:前回の嶋津輝さんの「作家の読書道」を読んだら、年齢が近いせいか子供の頃に読んでいた漫画がことごとく被っていて、ちょっとテンションがあがりました(笑)。私も子供の頃は『悪魔の花嫁』や『翔んでるルーキー!』、『エースをねらえ!』や『エコエコアザラク』を読んでいました。『ベルサイユのばら』や『ガラスの仮面』も読んでいて、いちばん好きだったのは『はいからさんが通る』。漫画も親がはまると全巻買ってくれる法則が活きていて、大島やすいちさんの『おやこ刑事』というシリーズがそうでした。名前の通り父と息子が刑事で、1話完結で事件を解決していく内容だったんですけれど、漫画をあまり買ってくれなかった親も、「これはいいよ」と言って全巻揃えてもらいました。
――警察ものだったんですねえ。源泉を感じます。
伏尾:そうですね。読書歴の棚卸をしていてこれを思い出した時、私はこの頃からちゃんと警察ものを読んでいたんだなと、自分でもびっくりしました。
――警察ものといえば、当時ドラマで「太陽にほえろ!」など刑事ドラマが流行っていたと思うんですが、そういうのはご覧になっていました?
伏尾:見ていました。「太陽にほえろ!」、「Gメン'75」、「特捜最前線」あたりですね。特に「太陽にほえろ!」は私が子供の頃に始まって、高校生になってもまだ人気があったシリーズで印象深いです。高校時代はたしか神田正輝と三田村邦彦が若手刑事役だった時期で、友達が神田正輝派で私が三田村邦彦派で、学校でそういう話をしていた記憶があります。ただ私は、「太陽にほえろ!」ももちろん好きだったんですけれど、「Gメン'75」の雰囲気が好きで。香港ロケシリーズがあったんですよ。毎回、悪党を追ってGメンたちが香港に飛んで、アクションシーンが始まるんです。香港の大スターのカンフーの達人と日本のアクションスター倉田保昭さんが闘うのがお決まりで、私はその香港シリーズが大好きで。毎回ワクワクしながら見ていた記憶があります。
――弟さんとは、漫画などの貸し借りはしましたか。
伏尾:弟がはまったのは高橋留美子さんの『うる星やつら』でした。私が中学生の頃にアニメが始まって、五つ下の弟はまさにアニメからはまって単行本も買ってもらって、それを一緒に読んでいました。『北斗の拳』あたりも一緒に読みました。弟はそういう少年漫画も好きだったんですけれど、私の本棚にあった『ポーの一族』など面白そうなものはとりあえず読む子だったので、読んだ後に「あの場面は...」などと話をすることもありました。
――その頃で、ミステリ以外で印象に残っている本はありますか。
伏尾:母が佐藤愛子さんが好きで、特にエッセイが好きだったんですね。母に「面白いよ」と言われて私も読むようになって、そのなかでも『娘と私の時間』と『娘と私のアホ旅行』という2冊が印象深かったです。私にとって佐藤愛子さんは、自分が読まないジャンルを書いている作家さんという印象でしたが、読んだら本当に軽妙で笑えるエッセイで。こんなものを書ける人がこの世の中にいるんだ、佐藤愛子すごいな、みたいに思いました。ただ、エッセイ以外はあまりはまらなかったです。
――高校卒業後はどうされたのでしょうか。
伏尾:一応地元の大学に進学しましたが、そこで読書好きの友達と離れてしまって。今回、大学時代の読書を思い返そうとしたんですけれど、印象深いエピソードは見つかりませんでした。一応、青春はしていたと思うんですよね。アーチェリー部に入って活動したり、アルバイトをしたり、合コンしたりしていたんですけれど、あんまり読書はしていなかったですね。学生時代から社会人の最初の頃までは、あまり記憶に残る読書はなくて、むしろ映画を観ていました。読書でなくそっちのほうにいった感じですかね。
――これまでも映画のタイトルがいくつも挙がっていますが、どのあたりがお好きだったのですか。
伏尾:手あたり次第に観ていました。もちろん劇場にも観に行きましたが、当時はレンタルビデオが盛んだったので、週末になると何本か借りてきて過去の名作を含めてずっと観ていました。翌週それを返して、また新しいのを借りて、ホラーからSFからアクションから、本当に手当たり次第観ていました。
――好きな監督や俳優はいましたか。
伏尾:えっと......。いろいろいるんですが、今ぱっと頭に浮かんだところでいうと、私はニック・ノルティという役者さんが好きだったんですよ。どちらかというとアクションやバイオレンス系に出る役者さんで、彼がエディ・マーフィと共演した「48時間」の音楽とアクションシーンがものすごく好きで。続編の「48時間PART2/帰ってきたふたり」は劇場に観に行ったんですが、当時の劇場って2本立てで、しかも入れ替え制ではなく一度入ったらずっといられたんです。で、その時「48時間PART2」と同時上映だったのがデミ・ムーアの「ゴースト」で、それも面白い映画だったんですが、私はとにかくニック・ノルティを何回も観たいので、毎回「ゴースト」が間に挟まるのがとにかく苦痛で(苦笑)。それでも頑張って何回も何回も観た記憶があります。
今ちょっと名前が出てこないんですが他にも好きな役者さんはいて、名前を並べていったら友達に「なんか、きれいなジャガイモが好きなんだね」って言われたことがあるんですよ。言われてみれば、たしかにちょっとゴツくてマッチョで金髪で...みたいな役者さんが結構好きですね。そういう人たちはなかなか主演にはならず、虫みたいに殺される役とかが多いんですけれど...。あ、正統派もちゃんと好きです。キアヌ・リーブスも好きで、「マトリックス」とか「ジョン・ウィック」とかも観てます、はい。
――失礼ながら「きれいなジャガイモ」と聞いてまず浮かんだのが、えっと、私も名前が出てこないんですが、「リーサル・ウエポン」の...。
伏尾:あ、はいはい、メル・ギブソンですね。好きです(笑)。ただ、メル・ギブソンは「マッドマックス」の一作目がめちゃくちゃ格好いいんですよ。一作目の時のメル・ギブソンはまだ全然メジャーではなくて、あれが出世作になったと思います。観た時に「格好いいな。メル・ギブソンはおぼえておこう」と思いました。










