第289回:野宮有さん

作家の読書道 第289回:野宮有さん

2019年に電撃小説大賞からライトノベルでデビュー、さらに2025年に『殺し屋の営業術』で江戸川乱歩賞受賞し 、同作が本屋大賞にもノミネートされた野宮有さん。中学生の時から小説を書き始めたという野宮さんが影響を受けた作家、作品は? 「小説を書くために小説を読んでいた」という野宮さんの読書や執筆の変遷をおうかがいしました。

その1「シビアな内容に衝撃」 (1/9)

  • ポケットモンスタースペシャル (1) (てんとう虫コミックススペシャル)
  • 『ポケットモンスタースペシャル (1) (てんとう虫コミックススペシャル)』
    日下 秀憲,真斗
    小学館
    770円(税込)
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  • デルトラ・クエストI (1) 沈黙の森
  • 『デルトラ・クエストI (1) 沈黙の森』
    エミリー ロッダ,岡田 好恵
    岩崎書店
    1,540円(税込)
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  • 地獄堂霊界通信(1) (講談社文庫 こ 73-18)
  • 『地獄堂霊界通信(1) (講談社文庫 こ 73-18)』
    香月 日輪
    講談社
    715円(税込)
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  • 北斗の拳 1巻 (ゼノンコミックス)
  • 『北斗の拳 1巻 (ゼノンコミックス)』
    武論尊,原哲夫
    コアミックス
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  • ドカベン 1巻 (SAN-EI COMICS SC 001)
  • 『ドカベン 1巻 (SAN-EI COMICS SC 001)』
    水島新司
    三栄書房
    1,650円(税込)
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  • ゴルゴ13 (1) (SPコミックス)
  • 『ゴルゴ13 (1) (SPコミックス)』
    さいとう たかを
    リイド社
    535円(税込)
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  • 日本沈没(上) (角川文庫)
  • 『日本沈没(上) (角川文庫)』
    小松 左京
    KADOKAWA
    660円(税込)
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――いちばん古い読書の記憶を教えてください。

野宮:たぶんこれだと思うんですけれど、ポケモンの漫画版の『ポケットモンスタースペシャル』という本があって。「ポケモンだから」という理由で買ってもらったんですが、ポケモンが相手プレイヤーをめっちゃ攻撃するし、主人公が何回も死にかけたりするし、すごくシビアな内容でした。モンスターボールの真ん中についている開閉スイッチみたいなボタンを攻撃すればポケモンが出てこられないので、相手がそこを狙ってくるといった頭脳戦もやっていて。ぜんぜん子供向けの話ではなくてびっくりした記憶があります。でも面白かったんです。ちょっと前に読み返したんですけれど、今読んでも面白かったです。たぶん小学校低学年の頃で、それが最初に読んだ漫画だったと思います。

――ポケモンはゲームやアニメで親しんでいたわけですか。

野宮:そうですね。ただ、そんなにゲームをすぐ買ってもらえる家ではなかったんです。最初は年の離れた親戚が初期のカラーではないゲームボーイでポケモンをやっていて、それを貸してもらっていました。その後、カラー版を買ってもらったんだと思います。
なかなかゲームを買ってもらえないので、戦術を考えたんです。トイザらスとかにゲームやおもちゃのカタログみたいな冊子がありますよね。クリスマス前の時期に、その冊子のほしいゲームのところを指さして炬燵で寝て、親に「そんなに欲しいのか」と思わせる戦法をとりました(笑)。それでポケモンの「ルビー・サファイア」を買ってもらいました。

――その後の読書はいかがでしたか。

野宮:いろんなインタビューで話しているんですけれど、自分が住んでいたところは田舎で、小学生や中学生が自力で行ける範囲に書店がなかったんです。なので学校の授業で図書室の本を読むくらいでした。『デルトラ・クエスト』とか。すごく好きだったのは香月日輪さんの『地獄堂霊界通信』という児童文学のシリーズ。ワルガキ三人組がいろんな怪異と闘う話で、最初のうちはサブタイトルも『ワルガキ、幽霊にびびる!』みたいな児童書らしいものなんですけれど、だんだん『魔弾の射手』とか『幸福という名の怪物』みたいな、格好いいサブタイトルになっていくんですよ。学校の本当に小さな図書室なんですけれど、これだけは新刊が入ってくるので読み続けていたら高学年になるにつれどんどん少年漫画みたいな雰囲気になっていって、自分の成長とともにはまっていきました。

――放課後はどんな遊びをしていたのですか。

野宮:本当に田舎なので...。まあ友達の家で野球をやったり...。

――友達の家で野球...?どんだけ広い庭なんですか。

野宮:本当に田舎なので、庭が広いんです。もちろん結構飛ばすと隣の家にボールが入っちゃって、それを拾いに行ったりもしていました。あとは、遊戯王カードとか「スマブラ」とか、もう本当に同世代の人が辿るような遊びをやっていました。
読書でいうと、実家に本棚はなかったんですが、祖母の家に行くと昔の漫画が置いてあるんですよ。たぶん、おじさんが読んでいた漫画だと思うんですけれど、『北斗の拳』とか『ドカベン』とか『ゴルゴ13』とか。普段はまわりに本がないから、宝探しみたいな感じで、見つけると読んでいました。
実家も押し入れを探していくと、父親が昔読んでいたらしい『日本沈没』とか司馬遼太郎とかはありました。さすがに小学生では難しくて読めなかったです。

――ご出身は九州の福岡ですよね。

野宮:福岡県の豊前市というところです。でも、「本当にあったんだ」と言われるような中学校の出身です。

――どういう意味ですか。

野宮:たとえば高校で同じクラスになった豊前市出身の人に「どこ中なん?」と訊かれて中学校名を言うと、「あ、本当にあったんだ」と言われる、みたいな。全校生徒35人で、一学年10人前後の中学校だったので。

――じゃあ年齢関係なく一緒に遊んだりされていたのですか。

野宮:そうですね。5個下くらいまでは顔と名前が分かりますし、敬語という概念もなかったですね。クラスに男子は6人しかいなかったし。

――人見知りになるような環境ではなかったのですね。

野宮:そうですね。知らない人がいない感じだったので。でも、剣道をやっていたんですが、たまに他の学校の人と合同練習があると人見知りになっていた記憶があります。

――学校の国語の授業は好きでしたか。

野宮:小学生の頃は特別得意とか苦手といった意識はなかったです。ひとつ憶えているのが小4くらいの時に授業で1枚の絵を渡されて、それの物語を書きましょうという課題があったんですね。王子様と御姫様が湖の前にいて、向こう岸に渡ろうとするシーンの絵だったと思います。それだけなんか、褒められた記憶がうっすらとあります。何を書いたのかはまったく憶えていないです。

――物語を空想するのは好きでしたか。

野宮:小学校の時はそういうことはなかったです。でもひとつ、自分ではまったく憶えていないんですけれど、親や親戚からめっちゃ言われることがあって。まだ保育園に通っていたくらいの頃、台風がきた時に自分が「風と雨がけんかしている」みたいな表現をしたらしいんですよね。それを、親戚の集まりがあるたびにみんなに言われてめちゃくちゃ恥ずかしかったです。

――その頃、将来なりたいものってありましたか。

野宮:なんにもなかったですね。将来の夢のところにみんなが「野球選手」と書くので、僕も剣道をやっているのに「野球選手」と書いていました。それくらい、みんなに合わせる子供でした。
同学年の自分以外の男子5人が、みんなスポーツマンだったんです。後に自分もそんなに運動神経悪くないぞと気づくんですけれど、まわりがみんな運動できすぎて、自分は運動音痴だと思っていました。

――剣道はどうしてはじめたのですか。

野宮:しがらみで。もともと親がやっていたのかな。で、道場に行くようになって、正直弱かったので、一度も楽しいと思いませんでした。だけど人数が少ないから、一人抜けると試合ができなくなっちゃうので、やめられなかったんです。やめるタイミングは何回かあったんです。小3の時にソフトボールのチームができると聞いて、そっちに入りたいと親に直談判して却下され、中学の時に友達みんな野球部だからそっちに入りたいと言っても、自分が抜けると試合に出られないからと言われてやめられなくて。しかも中学で新しく剣道部を作ることになって、緩くやるから一応所属するだけのレベルでいいと聞いたので剣道部に入ったら、2年に上がった時にバレー部を全国2位に導いたことがある、しかも剣道経験者の先生が来て、スパルタ指導が始まって。誰一人上手くなろうと思っていなかったので、どんなに練習が厳しくても全然強くなりませんでした。
結局、剣道は中3まで続けましたが、楽しいと思いませんでした。でもそれは弱いからなんですよ。剣道をやっていた人と話すと、「楽しかった」という人は、やっぱり強いんです。

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