第289回:野宮有さん

作家の読書道 第289回:野宮有さん

2019年に電撃小説大賞からライトノベルでデビュー、さらに2025年に『殺し屋の営業術』で江戸川乱歩賞受賞し 、同作が本屋大賞にもノミネートされた野宮有さん。中学生の時から小説を書き始めたという野宮さんが影響を受けた作家、作品は? 「小説を書くために小説を読んでいた」という野宮さんの読書や執筆の変遷をおうかがいしました。

その2「中学生で携帯小説を書き始める」 (2/9)

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――部活も忙しかったと思いますが、中学時代、読書をしている時間はありましたか。

野宮:漫画はずっと読んでいたんです。自力で買いに行ける範囲にコンビニすらなかったんですが、親が仕事帰りに「少年ジャンプ」を買ってきてくれるようになって、それで『BLEACH』とか『D.Gray-man』とか『魔人探偵脳噛ネウロ』といったジャンプの漫画はたくさん読むようになっていました。
そんななか、誰でも携帯小説を投稿できる「モバゲー小説」が出てきていろいろ変わりました。クラスの男子6人全員で一斉に「携帯小説やろうぜ」となったんですよ。誰も小説を読んでいないのに(笑)。もちろんみんな速攻で飽きていったんですけれど、自分だけは楽しくてずっとやっていたんです。なので、小説を読み始める前に自分で書き始めたんです。

――どういう小説を書いていたのですか。

野宮:そもそも小説を読んだことがないので、擬音と台詞だけ、1ページ4行だけ、みたいな...。形式すら小説になっていないものを書いていました。『BLEACH』を真似して、黒い刀を持った灰崎という主人公が化け物と闘う、みたいな。本当に恥ずかしいですけれど、それはもう中学生のうちに消していると思うので大丈夫です(笑)。
書店には自力でいけないし、昼休みもサッカーやバスケをして学校の図書室にもなかなかいかなかったんで、携帯小説を読んで小説の勉強をしていたんですよね。でも、今でこそネット発で書籍化されるレベルの高い作品はありますけれど、当時は自分みたいな人ばっかりで、小説になっている人はほぼいない状態でした。でも、一部、明らかにレベルが高いなと分かる人がいて。今でもプロとして活躍されている方もいますね。二宮敦人さんとか。二宮さんの『!』というタイトルの作品がめちゃくちゃ面白くて、「あ、この人だけレベルが違う」と思っていました。
それで、レベルが違う人を発掘していくようになるんです。意外とそういう人ってあまりランキングにいなくて、ランクインするのはもっと中高生が書いた感じのデスゲームとかが多かったんです。でも、探していくとたまに本当にすごい人がいて、そういう人の作品だけでなく日記とかも見ると、どうやらプロの本を読んでいるらしいぞ、という。小説がうまくなるためには、プロの本を読まなきゃいけないんだと気づいて、ちょっとずつ、ちゃんと書店で本を買いたいな、ということを思うようになりました。
それと、意外とまわりの同世代でも影響を受けている人が多いんですけれど、小学生から中学生にかけて、「パワプロ」という野球ゲームをやっていて。それのゲームボーイアドバンス版の「パワプロクンポケット」シリーズのシナリオがめちゃくちゃ凝っていたんです。野球はあんまりしないで、悪の組織と戦ったりして。特に「パワポケ7」が「正義とは?」「悪とは?」みたいな深いテーマになっていて、影響を受けていますね。実際に携帯小説を書き始めた時に、「あ、パワポケのストーリーってすごかったんだ」と気づいて、もう一回やった記憶があります。野球ゲームというよりはノベルゲームのはしりみたいな感じでした。

――その頃にはもう、これからも小説を書いていこう、という気持ちになっていたということですよね。

野宮:そうですね。それで、小説を書くためのインプットとして、どうにか小説を読む手段はないか探っていたイメージです。
モバゲーでも、小説を指南する人がいましたね。そういうのを見て技法だけ勉強していました。いやもう本当に基本です。「...(三点リーダー)」はふたつ書くとか、台詞の前にキャラの名前を書いては駄目だ、とか。普通の指南書には絶対書かれていないレベルの初歩的な内容です。でも、当時は本当にそんなことすら知らなかったんです。

――設定やキャラクターをいろいろ想像するのは好きだったのですか。

野宮:はい。当時は全然実力がなかったので、一話だけ大量に作っていました。頭の中にはいろいろあるけれど、それをどうやって物語として展開していけばいいのか全然分かりませんでした。だから設定とかキャラクターとかを作って冒頭だけをずっと書き続けていましたね。序盤だけ大量に作って、更新できずに放置していたんです。教材が「ジャンプ」だけだったので、最初は『BLEACH』を真似して、その次に『D.Gray-man』を真似して(笑)。
でも普段本を読んでいそうな人が書いている携帯小説に影響を受けて、小説っぽいものを書いたりもしました。当時、モバゲーでサークルみたいな機能があって、そこに集まった人たちとテーマを一個決めてみんなで短篇を作ろう、ということになって。アパートに女刑事が何かの聞き込みにやってくるという設定で、そのアパートの住人たちが主人公で、おのおのに人生があって...みたいな群像劇をみんなで書いた記憶があります。内容は憶えていませんが、漫画のパクリではないものを書いたのはそれがはじめてだったかもしれません。

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