●担当者●忍書房 大井達夫

2011年5月6日更新

『ソングライン 』ブルース・チャトウィン

 アボリジニはそれぞれ固有のトーテムと先祖伝来の旅の物語をもっているのだという。旅の物語は一連の歌として記憶され、歌いながら実際にその道のり、ソングラインを歩くことが要求される。名前は命のかけらだとい... 記事を見る »
2011年3月24日更新

『図書館ねこデューイ』ヴィッキー・マイロン

 本書の舞台であるアイオワ州スペンサーで入植が始まったのは、ペリーが浦賀に来た1850年ころからである。1870年代に3度のイナゴ被害を受け一時農業が崩壊、1931年には火災により町の半分を焼失、19... 記事を見る »
2011年2月25日更新

『昔日の客』関口良雄

 マルチン・ルターは1517年秋、ヴィテンベルグ大学の神学教授のときに、「教会の権限で罪の許しに課せられる償いを軽減する」贖宥符の効力を批判した「95ヶ条の意見書」を書き、ライプツィヒ討論では公然と教... 記事を見る »
2011年1月27日更新

『幕末下級武士の絵日記』大岡敏昭

 1861年12月、武州忍藩の下級武士、尾崎石城は憤慨していた。二ヶ月前の飲み会で、酒を過ごし藩政批判したとして自宅謹慎を命じられたのである。御馬廻役禄高百石の知行取りだった四年前には、水戸天狗党に肩... 記事を見る »
2010年12月23日更新

『画本厄除け詩集』井伏鱒二 金井田英津子

 『プルーストとイカ』の著者メアリアン・ウルフの義母ロッテ・ノームは、孫たちに請われるままにその場に相応しい劇のセリフやト書き、小説や詩の断片を次々に暗誦して見せた。あまり見事に暗誦するので、ある日や... 記事を見る »
2010年11月25日更新

『傷だらけの店長』伊達雅彦

 副題が「それでもやらねばならない」、帯の後ろに「店長、平気ですか?」の惹起。どうも違和感が残る。「やらなければならない」のは何か。店長に言葉をかけるのは、ヒラの店員かバイトだろうが、「平気ですか」と... 記事を見る »
2010年10月29日更新

『紅蓮の狼』宮本昌孝

 天正18(1590)年、北条氏直に最後通牒を突きつけた豊臣秀吉は、21万といわれる軍勢で小田原城を包囲した。北条方の城は攻め立てられ次々と陥落するなか、智将・石田三成が攻略する武蔵忍城のみがどうして... 記事を見る »
2010年9月24日更新

『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』中村安希

 ノンフィクションなのに、レイモンド・カーヴァーの小説みたいだと思った。もちろんカーヴァーの小説に出てくる女の子は、突然始まった生理でズボンを濡らしたまま、積載上限重量の倍の荷物を載せたトラックにしが... 記事を見る »
2010年8月26日更新

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー

 パリにおかしな本屋があるという。天井まで本の詰まった棚の間に狭苦しいベッドが点在し、それが店舗の2階まで続いている。路頭に迷った自称の作家や詩人は、店主の眼鏡にかなえば泊めてもらうことができる。才能... 記事を見る »
2010年7月23日更新

『プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?』メアリアン・ウルフ

 本を読まないから日本人が馬鹿になっちゃうと心配する人がいて、今年は国民読書年なのだという。昨年6月の国会で決まったのだ。読書は個人的な趣味だと思うから、読書の国民運動なんて気味が悪い。本が売れないと... 記事を見る »
2010年6月24日更新

『BORN TO RUN』クリストファー・マクドゥーガル

 1994年8月16日15時半、私は便ヶ島から入山して南アルプス縦断5日目、標高3000メートル悪沢岳肩の中岳避難小屋にいた。小屋の中には料金表がはりだしてあり、素泊まりのみ2500円とある。高いなあ... 記事を見る »
2010年5月27日更新

『美人好きは罪悪か?』小谷野敦

 小谷野敦をご存知か。私は知らなかった。客注があって仕入れ、ちらりと中を見たら酒井順子『私は美人』からの引用で、今ではヌード写真も美人が多いが、一昔前はけっこうブスのヌードというのがあって、それには美... 記事を見る »
忍書房 大井達夫
忍書房 大井達夫
「のぼうの城」で名を挙げた、埼玉県行田市忍(おし)城のそばで20坪ほどの小さな書店をやってます。従業員は姉と二人、私は社長ですが、自分の給料は出せないので平日は出版社に勤めています(もし持ってたら、新文化通信2008年1月24日号を読んでね)。文房具や三文印も扱う町の本屋さんなので、まちがっても話題の新刊平台2面展開なんてことはありません。でも、近所の物識りバアちゃんジイちゃんが立ち寄ってくれたり、立ち読みを繰り返した挙句、悩みに悩んでコミック一冊を持ってレジに来た小中学生に、雑誌の付録をおまけにつけるとまるで花が咲くみたいに笑顔になったりするのを見ていると、店をあけててよかったなあ、と思います。どうでえ、羨ましいだろう。