WEB本の雑誌

3月7日(金)

 朝から激しい雨。外に行くのにうんざりしていると、京都の書店さんから電話が入る。東京に来ているのでお会いしませんか?とのお誘い。雨にうんざりしている場合ではないと、会社を飛び出す。

 昼飯をご一緒し、京都の書店さん事情などを伺う。「この後どうするんですか?」と質問すると「東京の書店を廻るつもり」との答え。では「どちらを訪問するつもりですか?」と再度問うと「東京ランダムウォークに行きたいんですよ」との返事。だったらもう、本日の予定なんて遥か彼方にすっ飛ばし、ガイド役を引き受けるしかない。

 六本木へ移動し、東京ランダムウォークへ。
 渡辺さんと稲葉店長さんに事情を話すと、お二人とも新店の用意で忙しそうなご様子だったが「どうぞごゆっくりしていってください」と優しいご返事を頂く。

 京都の書店員さんはすぐさま棚を徘徊し出すが、その目は完全な仕事師の目であり、ギラリと光り、また手には素早くメモ帳を広げられていた。そして、しばらく棚を拝見した後、深い溜息を吐き出し、こんな言葉を呟いた。
「すごくイイ、本屋さんですね…」

 次なる目的地は同じく六本木のA書店さんへ。
 こちらは非常に仕掛け販売が上手いことで有名なMさんがいらっしゃるお店で、このMさんの目利きと販売力は凄まじい。

 最近の成果でいうと、エドワード・ケアリーの『望楼館追想』(文藝春秋)は『ハリーポッターと炎のゴブレット』より売ってしまったというからとんでもないし、それ以外でも『いつかわたしに会いにきて』エリカ・クラウス著(ハヤカワepi文庫)や『ハードボイルド・エッグ』荻原浩著(双葉文庫)など、他店では考えられない販売数を誇っている。

 その仕掛けであるポップを目の当たりにして京都の書店さんは目を見開き「なんかスゴイパワーですね、これ」としばし呆気にとられていた。その後、Mさんを交えて3人でしばらく文庫談義などをし、お店を後にする。

 書店員さん同士の会話を脇に立って聞いているのはすこぶる面白い。
 何気ないキーワードで次から次へと類書を挙がり、また、その時の自店での売れ行き状況を正確に告げる。何だかプロ野球の選手が全ヒットの配球やシーンを覚えていたり、ストライカーがすべてのゴールシーンを覚えているような感じだ。いやはや、すごい。