WEB本の雑誌

3月12日(水)

 昨日に続いて、身内の恥を晒すのは、そのまま本の雑誌社の恥を晒すことになり、それが発行部数の減少に繋がるのではないかと不安を抱えつつ、本日はその危険を顧みず、目黒と浜本の信じられない無知を記す。

 夜、社員全員がダラダラと残業をしているところに、顧問目黒が小脇にスポーツ新聞を挟んで1Fに顔を出した。僕と浜本は会社の真ん中にある大テーブルで作業をしていて、目黒もそこに座った。しばらく新聞を読みながら、競馬や本の話をしていた。そのうち目黒は思いだしたようにこんな話をし出す。

「△△出版って変な会社なんだよなぁ。知り合いの編集者が定年になったんだけど、誕生日に退職するんだぜ?」
 すると作業に没頭していた浜本も顔を上げ
「××さんのことでしょ、可哀相ですよねぇ、あとちょっとで年度末なんだからそこまで待ってあげればいいのにねぇ」

 僕、両者の顔を眺め、これが本気なのか僕をだます話題なのか探りを入れる。二人ともいたって真剣で、本気で△△社に憤りを感じているようだった。

「あの~、目黒さん。普通定年退職っていったら、その定年の年齢の誕生日かその月に退職していくもんなんですけど」
「えっ、ウソ? そんな話聞いたことがないよ、なあ浜本?」
「ハイ。杉江、オマエまた適当なこと言っているんだろ? オマエがどれくらい適当かはもうわかってるからいいんだよ。昨日の株だってわかってなかったし」

 二人ともまったく信用しそうにない。ならば具体例を出して納得させるしかないわけで、僕が前に勤めていた会社で定年退職していった経理部長も誕生日に辞めていきましたよと伝える。

「じゃあ、あれだ、出版業界はそういう慣習なんだな。ふーん…」

 顧問目黒、56歳。これは現在の社会であれば、既に定年退職している年齢でもある。幸せな人ってこんな人のことを言うだろうな…。