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8月16日(土) 炎のサッカー日誌 2002.09

 異常気象の雨がどれだけ降ろうが、レッズバカは試合開始13時間前から並んでいる。
 もちろんスタジアムの外だから屋根はない。ほとんど役に立たない傘を片手に、アスファルトに敷いたレジャーシートに打ちつける雨の音を聞きながら、その時が来るのを、そして歓喜の瞬間が来るのをひたすら待つ。

 Jリーグで呪い殺したくなるほどムカツク選手を3人挙げよと言われたら、僕は即座にこの3人の名前を挙げる。

1 藤田俊哉
2 北澤豪
3 柳沢敦

 なぜこの3人なのかというと、こいつら揃いも揃ってレッズ戦で妙に活躍をするのだ。それも一番嫌な状況でゴールを決めてくる。柳沢なんて日本一得点の匂いを感じさせないFWのくせに、なぜかレッズ戦だとシュートを打ってくるし、北澤は僕らを谷底に突き落とすゴールを何度も決めている。一番忘れられないのはJ2降格シーズンのファイナル5で戦ったヴェルディ戦。こちらレッズはもう絶対負けられない状況だったのに、いきなりゴール前に現れそのまま絶望のシュートを決めやがったのだ。ああ、思い出しているだけで腹が立ってくる。

 そして藤田俊哉。

 例え、僕らレッズサポがどれだけバカだとしても、いわゆる何度も優勝している常勝チームと自分たちの目の前で試合を繰り広げている赤いユニフォームを着たチームに大きな差があることは知っている。だからこそ、その常勝チームに対しての勝利は、1勝が2勝、3勝分の喜びを生むのである。そして最大の喜びを生み出す相手は、もちろんJリーグ最強チームジュビロ磐田なのだが、その喜びを打ち砕いてきたのはいつも藤田俊哉だった。藤田はちょろちょろと敵ゴール前の、それも人のいないところに顔を出すのが大好きで、しかもムカツクほど上手い。だからレッズにとって絶対絶命のピンチを、ミスすることなく本当に絶命の道へ誘うのである。

 ところが本日開幕される2NDステージを前に素晴らしい朗報が届く。なんと藤田と柳沢が揃いも揃って海外に消えてくれるというではないか。北澤は前年いっぱいで引退しているから、これでレッズにとっての天敵が3人も消え去ったのである。

 いやはや何かを予感させる展開ではないか。
 ついに神様が我らレッズに微笑んでくれるのか?
 でも絶対その言葉は書かない。なぜなら昨年福田が「負けないよ」とつい一言漏らして以降、一気に連敗街道に突入してしまった悪夢があるからだ。だから予感である。

★   ★   ★

 結局、雨は止むことなく、試合が始まった。

 ジュビロは藤田が消え去ったのに加え、ゴン中山、鈴木秀人もケガや病気で出場せず、おいおい、本当に神様が微笑んでいるんじゃないかと希望が膨らむ。

 前半12分。
 日本代表でついに人間性を変えたと信じたい山田から、チビッコの夢を背負った田中達也に絶妙なタイミングでボールが渡る。そのボールを中に折り返したところ、雨でもなぜか早く走れる河童エメルソンがシュート。あわわわわ、先制しちゃったじゃねぇか!!!の1対0。

 前半はそのまま終わるが、いつものレッズと違い妙に執着心がある。相手ボールにしつこくプレスをかけるは、激しい当たりも辞さない。何かが起こる予感。

 後半に入ってもそのペースは落ちず21分。
 またもやサイドに開いた田中達也に好パスが繋がり、エメルソンへ折り返し。もちろん落ち着いてゴールを決めて、おいおいこれはもしかしての2対0。

 その後は、じれったいほどなかなか過ぎない時間を気にしつつ、88分にPKを決められまさかの2対1と追いかけられるが、そのすぐダメ押しの3点目を田中達也が決めて、大勝利が決定!!!

 試合後、さいたまスタジアムには『We are Diamonds』の大合唱が響き渡る。全身ずぶ濡れのサポーターの顔に、至福の笑顔があった。