WEB本の雑誌

10月7日(火)

 珍しく朝早くから編集部が揃っているなと思ったら、編集長の椎名がやってきた。なるほど今日は打ち合わせ日だったのか。こういうときに余計な口出しをすると大変なことになるのは、この6年間の「本の雑誌ライフ」で何度も苦渋を味わってきたので、一切口も顔も出さず、耳だけ立ててデスクワークに集中しているフリをする。おかげで僕は何も振られず、一安心。

 その打ち合わせが終わったのを見計らい、椎名に話しかける。八重洲ブックセンターの担当Kさんから先週末行ったサイン会の御礼を伝言されていたのだ。すると椎名は、あの独特な笑顔で喜びつつ、こんなことを話し出す。

「やっぱり東京だとサラリーマンが多くて、何だかうれしくてさあ。『椎名さんと同じ年です』なんて人が結構いて、その人達を見ていたら、本当に……」
 そこで椎名は一瞬口ごもる。何となく答えがわかったので、僕が変わりに言葉を繋いだ。
「おじさんなんですか?」
「そうなんだよ、自分の年を感じちゃったよ…」

 思わず吹き出してしまったが、椎名誠基準で年齢を当てはめていったら、ほとんどの人が年上に分類されるのではなかろうか。還暦間近で、毎朝筋トレするような人はそうそういないし、髪の毛も運良くフサフサ、顔だって真っ黒に日焼けしていて、フットワークも軽いし、気も若い。もし、その辺を数値化出来たとしたら、きっと本の雑誌社で一番若いのは椎名だろう。

 いやはや、いつまでも若い上司がいると大変だ。