10月9日(木)
かつて書店さんから出版社へ本を注文する方法は、短冊が主だった。本に挟み込まれているスリップのようなものに(スリップをそのまま使う場合も多い)、注文冊数を書き、番線を押して取次店さんへ渡していた。それを出版社は納品の際に回収し、次回の納品に出荷した。とても時間がかかる方法だけど、経費を考えると短冊に頼らざる得なかった。余程の急ぎのものだけを電話で発注していた。
ところが、ここに数年で書店さんの発注スタイルが完全に変わってしまった。それはネットによる発注だ。取次店のPOSはもちろん、大手出版社は独自の発注ホームページを設け、そちらで書店さんの注文を受け付けるようになった。電話での注文センターは昔からあったが、こちらはほとんど朝から晩まで繋がらず、また出版社の電話応対は悪いところも多く、書店員さんのストレスを生む原因のひとつでった。その点、ネットならば不快な思いをすることもなく、また24時間OKだから、多くの書店員さんが自宅に仕事を持ち帰り、自分のパソコンで発注をしてたりする。まあ、ネット注文にもまだまだ問題点もあるようなのだが、とにかく主体になりつつあるのは間違いない。
で、である。
本日訪問したとある書店さんで、こんなことを言われてしまったのだ。
「本の雑誌社もネットで受けないとダメよ。なんか家からのネット発注に慣れちゃうと注文しようかなって思っていてもネット受注のない出版社だと面倒になって、結局忘れちゃったりするのよ。だからねぇ…」
お店を出たあと、何度も何度もこの会話を反芻した。
確かにそうなんだろうと思う。僕自身、ネットで出来ることから優先的に生活しているし、その楽さに慣れると面倒なことは後回ししてしまい、そして結局忘れてしまうからだ。
もし注文したい本が、週に何十冊も売れるようなものならば、書店さんも電話を使ってでも注文をしてくるだろう。しかし本の雑誌社も含め中小の出版社の本は、もっとジワジワ少しずつ売れていくものが多い。こういう本は、書店さん側から見れば、ある意味別の本でも補えるわけで、それでなくても毎日新刊が山のように届き置き場所に困っているのだから。いやはや怖い。怖すぎる。
こちらにはそのようなシステムを作る経費もないし、いったいどうしたら良いんだ?
うーん、参った。