12月3日(水)
今年の夏頃、新橋のS書店を訪問し、本好き担当者Sさんと最近の面白本について話していたとき、Sさんがすぐさま挙げたのが『晩鐘』乃波アサ著(双葉社)であった。上下巻それぞれ600ページを越える超大作だ。
まるで『模倣犯』のようなボリュームにたじろぎつつ、Sさんの話を聞いていると『晩鐘』は、約10年ほど前に書かれた『風紋』(双葉文庫)の続編であり、その『風紋』もとても面白いらしい。そういえば、顧問・目黒にどこかの書店さんのフェアを頼んだときにこの『風紋』が挙がっていたな、なんてことを思い出しつつ、とりあえず前作である『風紋』を購入した。
で、それをすぐ読めば良かったのに、『風紋』も上下巻でかなりのボリュームがあり、そのときは『三国志』北方謙三著(ハルキ文庫)という全13卷の大作にどっぷりハマッていて、すっかり積読になってしまっていた。いや積読というより、買ったことを忘れていた。
ところが先週、二子玉川のK書店を訪問し、文庫担当のYさんと最近売れている本の話をしていたところ、その『風紋』が挙がった。それは仕掛けているというほどの積み方ではないのだが、コンスタントにずーっと売れ続けているという話だった。それで、あわてて読み出したのが今週始めのこと。
これがこれがとてつもなく面白い。
殺人事件の被害者と加害者のその家族や血族にスポットをあて、それぞれが事件後どのように生きていくことができるのかを描いた心理サスペンスだ。もう身を捩って勘弁してくださいというほどリアリティーにあふれており、とにかく何もかも背負って生きていくつらさには背筋が震え、僕は絶対犯罪は犯さないと決意したし、家族を含め血族全員に「悪いことはしないように」とメールしてしまった。
とにかくツライツライ物語なのだが、人というのはひとりで生きていけない以上、多くの人と関係していくしかないわけで、そのなかで自分というものの決して小さくない影響力を考えさせられる小説だ。安易な救いはまったくない。とにかく深い小説である。
読後の問題はただひとつ。
この小便をチビってしまいそうなほど恐い小説の続編を読めるのだろうかということだ。