萩尾望都、ファンタジーノベル大賞選考委員に

文=大森望

 11月22日、第22回日本ファンタジーノベル大賞(http://www.shinchosha.co.jp/prizes/fantasy/)授賞式が東京・丸の内のクラブ関東で開かれた。同賞は、読売新聞東京本社および清水建設が主催し、新潮社が後援する長編小説の公募新人賞。
 今回の大賞受賞作、紫野貴李『前夜の航跡』は、ワシントン軍縮条約下にある昭和初期の帝国海軍で起きた5つの事件(主に訓練中の海難事故)を描く連作短編集(最後の1編は受賞後に追加)。彫り上げた作品に霊を込めることができる仏師がそれぞれの作品をつなぐ役割を果たし、異色のゴースト・ストーリー集としても読める。
 受賞者の紫野貴李(しの・きり)は、1960年、埼玉県生まれ。埼玉県立川越女子高等学校卒業。埼玉県狭山市在住。
 選考委員の椎名誠は、「描写が非常に細かくてリアルなので軍事おたくの男かと思ったら女性だったので驚いた。どうしてこういう作品が書けるのか。とにかく僕にとっては謎めいた人物。資料を見ると、『本名・非公表』とあったので、"そうか、非・公表さんという中国の方だったのか"と思った」と会場を笑わせた。
 優秀賞を受賞した『月のさなぎ』は、性別を持たずに生まれてきた子供たち("月童子"と呼ばれる)が森の中の全寮制学校に(成人するまでの間)隔離されて暮らしているという設定のギムナジウムもの。著者の石野晶(いしの・あきら)は、2007年に第8回小学館文庫小説大賞を『パークチルドレン』で受賞している(石野文香名義)。
 日本ファンタジーノベル大賞の選考委員は、昨年まで、荒俣宏、井上ひさし、小谷真理、椎名誠、鈴木光司の5人だったが、井上ひさしの死去にともない、新たに萩尾望都が選考委員に就任。授賞式後の懇親パーティで挨拶に立ち、「もともと小説は大好きなので、精一杯やりたい」と抱負を語った。パーティの合間には、受賞者がサインを求めるひと幕も。萩尾望都が小説を対象とする公募新人賞の選考に携わるのは、ゆきのまち幻想文学賞に続き二度め。既発表のSF作品を対象とする日本SF大賞の選考委員も経験している。
 同賞のスタート時、手塚治虫が選考委員に加わっていた(第1回の選考会前に死去)ことを考えると、原点にもどった人選とも言えるかもしれない。

(大森望)

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