『名前探しの放課後』

名前探しの放課後
  • 辻村深月 (著)
  • 講談社
  • 税込 1,470円
  • 2007年12月
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  1. 桃山ビート・トライブ
  2. 名前探しの放課後
  3. リリイの籠
  4. 堂島物語
  5. ルピナス探偵団の憂愁
  6. Y氏の終わり
  7. ナイフ投げ師
佐々木克雄

評価:星3つ

 上下巻の長いストーリーを読み進めながら、タイムスリップを用いた甘酸っぱいミステリだとばかり思っておりました。まあ、最後まで謎を引っぱってるから、簡単には終わらないだろなと予測はしてたけど──ドッシャンガラガラです。おみごと、参りました。
 過去に戻った男子高校生が、未来に起こる同学年の「誰か」の自殺を食い止めようとするてな話なのだが、小路幸也『カレンダーボーイ』を読んで間もなかったので「これもか?」と呟いてしまった。便利なんですかね、タイムスリップ。でも本作はSFミステリだけでなく、「キュン」てな要素が多くて、個人的には萌え所がいっぱい。地方の高校、遊びスポットはジャスコ、個性豊かな友人たち、溜まり場の洋食屋などなど。こんな何気ない要素たちと、本筋には関係なさそうな話を漠然と読んでいたから、最後にやられてしまいました。
 まんまと騙されて、ちょっと悔しい読後感。でもそれもまた一興。

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下久保玉美

評価:星3つ

 何か知らんけど3カ月前の過去にタイムスリップしてしまった高校生が、3ヶ月後自殺してしまうクラスメートを救うために仲間たちと頑張る小説。そのクラスメートを救う一連の活動の中で主人公やその仲間たちも、また自分の弱さに気付き、克服していくというお決まりのストーリーにもどかしさを感じるとともに、やはり応援もしてしまいます。
 本書は2回読むと面白い小説です。1回目はストーリーを追って、2回目は文章のあちこちに散りばめられた伏線を楽しんでいただきたい。初見で「何だか変」と思いながら通り過ぎた箇所がラストに効いてきます。大団円のラストに期待してください。
 でも、私はこのラストが気に食わないのです。エピローグにいろいろ盛り込みすぎかなという感じがします。もう少しすっきりするとより主人公の今後が際立ったのではないでしょうか。

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増住雄大

評価:星5つ

 いいねいいね。ひりひりするくらい、青春だね。まったく。うらやましいよ。
 てな風に憧れたりいじけたり共感したり身悶えしたりして「青春小説」パートにどっぷり浸かっていたら、最後ですこーんと派手にすっ転ばされるから本当に油断ならないんですよ辻村深月は。
 というわけで五つ星です。
 ふと気付くと三ヶ月前にタイムスリップしてしまっていた主人公いつかは、記憶にある「同学年の誰か」の自殺を止めるために、同級生らと「放課後の名前探し」に奔走する。果たして自殺するのは誰? 無事に自殺を止めることはできる? そしてタイムスリップの原因は?
 学園モノの青春小説として、おそろしく高水準なんすよ。それでいてきっちりミステリ。どう見ても極上のエンタメです。本当にありがとうございました。
 新作を発表するごとに、おそらく徐々にファンは増えている。でも「徐々に」とかじゃなくて、もうそろそろ本格的にブレイクしてもいいんじゃなかろうか辻村深月。今回も傑作ですぜ。

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松井ゆかり

評価:星4つ

 私の夫はキャラ萌えという概念をほとんど有していない。「ねえねえ、萌絵ちゃんと四季博士のどっち派?(言わずと知れた森博嗣先生の「すべてがFになる」をはじめとする一連の作品における主要人物)」などと尋ねても、「いや、キャラクターで読んでいるわけじゃないから」ととりつく島もない。翻って私は感情移入できるキャラや萌えキャラがいないとどうにも乗れないタイプだ。目当ての登場人物なくして何の楽しみがあろうか。そういう意味では、この作品はまさに目移りしそうなほどナイスなキャラクター揃いの、読書の醍醐味を満喫できる小説だった。かなり迷ったが、一押しは次期生徒会長の座を狙う天木。
 ストーリーの方も読み応え十分。「そんなばかな」と思う部分も多々あるものの(人物造形を含め)、こんな風に優しく気恥ずかしい高校時代っていいよなと憧れる。主人公は3か月後の記憶を持つ依田いつか。未来で自殺する同級生を救うため、友人たちの力を借りて必死の行動をとる…。
 青春時代というのは、とにかく本気で生きるのが正しい。

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望月香子

評価:星3つ

 3ヶ月前の世界から、タイムスリップで戻されてしまった男子高校生の依田いつか。
 同級生が自殺してしまうという事実を知ったまま、タイムスリップしてしまったいつかは、その秘密を打ち明けた同級生のあすなたちと、誰かは特定できない同級生の自殺を止めようと…。
 3ヶ月前にタイムスリップした主人公、という設定に、妙にすんなりと入っていけたのは、一見軽やかにみせた文体のお陰かもしれません。高校生が結託して自殺をくいとめようと努力する様子に、惹き込まれてゆきます。
 洋食レストランを営んでいるあすなのおじいちゃんは、かなりいい味を出しています。

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