『戸村飯店青春100連発』

戸村飯店青春100連発
  • 瀬尾 まいこ (著)
  • 理論社
  • 税込 1,575円
  • 2008年3月
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  1. ジーン・ワルツ
  2. 戸村飯店青春100連発
  3. そろそろ旅に
  4. 遺稿集
  5. エヴリブレス
  6. サトシ・マイナス
  7. 四月馬鹿
佐々木克雄

評価:星3つ

 なんとまあストレートなタイトルですこと。瀬尾まいこ作品だから命名できるんですよコレ。でもって登場する兄弟もタイトルに負けず劣らずアホアホパワー全開のセイシュンを繰り広げてくれています。ハッキリ言います。こういうお話「大好き!」です。
『じゃりン子チエ』や『兎の眼』を彷彿させる大阪下町。中華料理屋の兄弟は対照的な性格……てな人物設定なのですが、ページをめくるにつれ、互いが抱く兄弟へのコンプレックスや、あれこれ考えすぎる部分なんて「やっぱ自分ら、よう似た兄弟やんか」とツッコミを入れたくなる。歯に衣着せぬ言動の大阪常連客と、兄が暮らす東京の人々が対照的で、だからこそ二つの町の違い、離れて暮らす兄弟の、それぞれの思いが一層浮き出てくるわけで、このあたり瀬尾さんは巧いなあ……と思うのです。終盤、ウルフルズを聴いた兄が帰郷を決意するくだりなんてもう……大阪人なら「せやせや」って頷いていることでしょう。ビバ青春。戸村兄弟に幸あれ。

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下久保玉美

評価:星3つ

 兄弟姉妹を欲しいと思ったことがない、いやいても面倒くさそうだからいらねえや、と思っている一人っ子です。そのため、兄弟のいる生活というものがわからない。いればいたらで楽しいのかなやっぱり面倒なのかね?
 本書に出てくる兄弟は互いに気が合わないなあ、と思いつつも心のどこかで繋がっているというどこにでもいるといえばどこにでもいそうな大阪在住の兄弟。この2人、どちらかと言えば私は兄ちゃんの方にシンパシーを感じてならない。第1章の弟の話を読むといけ好かない兄ちゃんという感じがするけど、実際の兄ちゃんは大阪、それも下町の吉本新喜劇のノリについていけないだけで本当はいい奴なんだよ。弟にはノリについていけないのがすかしてる風に見えてしまうんだよね。弟と言えば兄ちゃんとは逆にコテコテの大阪人。合うはずもない、ということで。
 でもある日、兄ちゃんが上京し自活し始めたことから2人を取り巻く環境が変わり、それに伴い2人の関係も動き始めます。兄弟は分かり合える日が来るのか?そこをユーモアたっぷりに描いています。

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増住雄大

評価:星4つ

 戸村兄弟、好きすぎる。
 小説の登場人物に、ここまで好意的な感情を抱いたのは久しぶりかも。でも、こいつらは誰だって好きになるって。大阪を出て行こうとする何事にも器用な兄ヘイスケと、そんな兄貴に対して微妙な感情を抱える明るく元気な弟コウスケ。二人が送る、喜んだり、怒ったり、落ち込んだり、悩んだり、楽しかったりの毎日に、読者は誰しもいつのまにか笑顔に。ほんと自然に笑えて、さわやかな気分になれる作品。今、読み返しても、ああもう、青春だなあ、これ。
 ラストも良いんだよねえ。二人とも、一年で成長したんだなあ……って、なんか親目線になってしまった。しかし、うん、良いねえ、これ。
「100連発」ってタイトルを初めて見たときは「何やの?」って思ったけれど、読み終えた今となっては、確かに「青春」「100連発」だったなあ、と。タイトル合ってます。合ってますよ。
 老若男女問わず誰にでも薦められる、すばらしい小説だと思います。

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松井ゆかり

評価:星5つ

 出世作「図書館の神様」が気に入って瀬尾まいこさんの作品はいくつか読んでいるが、これがいちばん好きかもしれない。これまであまり著者のユーモアのセンスには注目していなかったのだが、今回よかった。関西弁という若干反則気味の小道具を使用しているということもあろうが、こういう会話の妙を書ける作家だったんだなあ。
 ヘイスケとコウスケは戸板飯店の年子の兄弟。兄ヘイスケは要領がよく見た目もいいので女の子にもてる。弟コウスケはお人好しでムードメイカー。一見正反対のふたりだが、実はどちらも不器用にしか生きられないという点でとても似ていると思った。3人の息子の母親としては、兄弟ものと聞いてはそれでなくても興味を引かれずにいられないのだが、いや〜、楽しませていただきました。とか言いつつ、個人的な好みとしてはコウスケの同級生北島君が好みなのだが。「夏休み(or冬休み)を制するやつが女も制する」はけだし名言。

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望月香子

評価:星4つ

 普通の登場人物と、普通のストーリーで、ここまで読ませる小説というのはすごいと思います。関西にある中華飯店を営む実家に暮らす兄弟。兄は、「小説家になりたい」と言い、専門学校へ通うという理由で上京し、ひとり暮らしをはじめるが…。要領がいいとされる兄と、ちょっぴり損な役回りの弟のそれぞれの物語が、これといった事件や出来事がそう起こらない中でも、ぐいぐい読ませます。兄弟の絆や、両親の愛、進路の悩み、恋が、思春期の兄弟を軸に描かれていて、その「普通さ」から、普通な人も普通な人生もないんだなあ、と感じる、ほのぼのしているけれど、ぴりっと締まっている1冊です。

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