『マカンマラン 二十三時の夜食カフェ』古内一絵
●今回の書評担当者●岡本書店恵庭店 南聡子
中学生の時の英語のテストで「牛」を「cow」ではなく「beco」と書いた北海道民の岡本書店 恵庭店の南です。
今月も読んでくださりありがとうございます。
今月は古内一絵さんの「マカンマラン 二十三時の夜食カフェ」について書かせていただきます。
「マカンマラン」はシリーズ化しており、計4冊刊行されていて完結しております。
1冊に4話の短編が収められており、それぞれ悩みや孤独を抱える主人公たちが導かれるように住宅地の中にひっそりと佇む古民家カフェマカンマランを訪れます。
そのカフェは夜だけ開店していて、店主は身長180cm越えのど迫力ドラァグクイーンのシャールさん。オカマさんではなくドラァグクイーンなのがポイントです。ドラァグクイーンと書かれていることで、シャールさんの容姿を想像しやすくなっております。
そんなシャールさんが作るのは、主人公それぞれを癒してくれるお野菜たっぷりの優しいお料理たち。
シャールさん、そして優しいお料理に癒されて、主人公たちはまたそれぞれの人生に踏み出してゆきます。
私が初めて「マカンマラン」を読んだのは、インスタで紹介している方のレビューを読んで面白そうだと思ったからです。
当時は専業主婦でしたので、図書館で借りようと予約をしました。
何人か待っている方がいて、私の手元に来るまでに数ヶ月かかりました。(根気だけは小麦粉で米をチネるよゐこ有野さんくらいあるんです)
そして読みました。そして買いました。
一回読んだのに買いました。絶対にまた読みたくなると確信したからです。
主人公たちはそれぞれ別の事情を抱えていて悩みも千差万別なんですが、そのどれもが自分でも気付かなかった共感を私に与えてくれました。
別に境遇が一緒というわけでも、同じ経験をしたというわけでもないのですが、「なんかわかるなー、その気持ち」って心の隅っこをつつかれる感じなんです。
そしてシャールさんの言葉で、主人公を通して私自身も救われるんです。
「苦しかったり、つらかったりするのは、あなたがちゃんと自分の心と頭で考えて、前へ進もうとしている証拠よ」
そっか、私、前に進みたいんだ、って思いました。
私が文芸担当になった時に、真っ先に文芸棚の一番目立つアイラインに置いた本。
そしてすぐに作った手書きのポップ。
「気が向いたら読み返したいから、本棚の一番いいところに置いておきたくなる本です」
この気持ちは今も変わっていません。
- 『クリスマスのフロスト』R・D・ウィングフィールド (2022年6月16日更新)
- 『いたいいたいはとんでいけ』松谷みよ子 (2022年5月19日更新)
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- 岡本書店恵庭店 南聡子
- 大学生の時にアガサ・クリスティを読破、そこから根っからのミステリー好きに。読書以外ではハンドメイドと和装、テレビゲームが趣味。お店では手書きPOPを日々せっせと作っています。色んな本に出会える書店員になってよかったと思う今日この頃です。