『方舟』夕木春央

●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織

寒い日々が続き、毎朝、最愛の旦那・布団と離れるのが辛く、毎日ギリギリ出勤の山下書店世田谷店・漆原です。

皆様、こんにちは。
今月2月は、読書好きの毎年の楽しみ【本屋大賞】の二次投票の〆切でございます。
今年のノミネート作10作品、すでに全作品読んだという猛者もいらっしゃるのでしょうか?
昨年は、ギリギリの投票となってしまった私ですが、今年は6作品既読作品がノミネートされたので『余裕だ!』と思っていたのですが......。
未読の4作品も読了し、今、2周目に入っております。だって、どの作品もそれぞれ魅力があり、選ぶの難しい!!!

と言うことで、今回ご紹介させていただくのはノミネート作品のひとつ、夕木春央さんの『方舟』です。

主人公の柊一は従兄の翔太郎を連れ、大学時代のサークル仲間・裕哉の別荘に、学生時代よく遊んでいた5人と集まった。裕哉が、歩いて行ける場所に地下建築があるから行ってみようと提案し、柊一たちは山奥に向かうがなかなかたどり着けない。ようやく日が暮れる頃、地下建築にたどり着いた一行に山道に迷った3人家族が加わり、10人で一夜を過ごすことになるが、地震が起こり、入り口が岩で塞がれ閉じ込められてしまう。また、元々地下3階は浸水していたが、地震により水位が上がり始める。誰か一人が建物内に残り巻き上げ機で岩を地下2階に落とせば脱出できるが、その一人は犠牲になるしかない。そんな中、裕哉が死体で見つかった。誰か一人、生贄にしなければ助からない。浸水するまでのタイムリミットは一週間。全員で死ぬのか、誰か一人生贄とするか。犯人は誰か。お互いを信じられない状況で、さらに2人目の死体が見つかる...。

いや、なんですか? この作品。びっくりです。ぐいぐい世界に引き込まれます。再読なので犯人わかってるのに、ドキドキします。初読では気づかなかった伏線にも気づき、楽しい!
そして、最後のどんでん返しが楽しみで仕方ない。

誰が? どうして?
こんなに、犯人に驚かされたのは初めてかもしれません。

自分がこの状況になったら、こんな強く精神を持ち堪えられるのか、と考えてしまうとともに、その強さに憧れてしまう私なのでした。

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山下書店世田谷店 漆原香織
山下書店世田谷店 漆原香織
『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。