第246回:結城真一郎さん

作家の読書道 第246回:結城真一郎さん

2018年に第5回新潮ミステリー大賞を受賞した『名もなき星の哀歌』でデビュー、今年は第4作となる短篇集『#真相をお話しします』が大評判となっている結城真一郎さん。中学校の卒業文集執筆の際に影響を与えたベストセラー、新人賞の投稿へと火をつけたあの作家…。読書遍歴と作家への道、今の時代のミステリーについての思いなどたっぷりうかがいました。

その4「謳歌した高校生活」 (4/9)

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――高校時代はどのように過ごされたのですか。

結城:こんなに創作の話を熱弁した後に言うのは恐縮なんですけれど、そこから一切離れて、完全に学校行事一色の生活をしていました。運動会、文化祭、サッカー部...。サッカー部のメンバーでバンドを組んでライブハウスや文化祭で演奏したりしていました。文化祭の中後夜祭の委員長というか、トップをやったりもしていて、開成生と来場した女子高校生のフィーリングカップルとか、今はポリコレ的にどうかと言われそうですがミスター開成といったものを企画運営していました。

――結城さん、仕切るの上手そうですね。

結城:分からないですけれど、そういうのをやりたがるタイプでした。何かを企画して誰かが面白がってくれるのを見るのがすごく楽しいというタイプで、そういうことに積極的に名乗りを上げていました。

――バンドはどのようなジャンルの音楽を?

結城:邦楽のロックですね。L'Arc-en-Cielとか、GLAYとか、X JAPANとか。最初はバンド内でも方向性が揺れて、もっとコアな洋楽で音楽性を出していきたいと言うメンバーと、僕みたいに目立ってモテたいからみんな知っている曲をやろうというメンバーで揉めて、最終的に僕が押し切りました。

――めっちゃ高音が出るボーカルがいたのですか。

結城:僕が高音が出るので、僕がボーカルでした(笑)。今はたぶん無理なんですけれど、XJAPANの「紅」も原曲キーで歌ってました。

――創作は一切していなかったということですが、読書の時間はありましたか。

結城:中学時代と比べると、明らかに少なくなったと思います。試験期間中にいろいろ読み漁る以外はあまり手を出さなくなっていました。部活や学校行事に打ち込んで、夜遅くまでファミレスでだべって、家に帰ると疲れて寝て...。たぶん、人生でいちばん、読書量が少なかった時期だと思います。

――読むとしたら東野圭吾さんたちの新刊とか。

結城:そうですね。あとは既刊でまだ手を出せていなかった過去作とか。
 あと憶えているのは、図書室で見つけた『世界不思議大全』という分厚い本ですね。オカルトとか、いわゆる未確認生物とか、都市伝説とかがまとめられていて、これにドハマりしました。結構値段も高かったんですが親に買ってもらいました。そうした不思議な世界に浸るのはやっぱり好きでしたね。なので、東野さんや伊坂さんや宮部さんを読みつつ、図書室や書店で目に留まった面白そうな本は読んでいました。
 漫画は引き続きめちゃくちゃ読んでいました。高校時代は小説よりも漫画のほうが多かったですね。『SLAM DUNK』とか『20世紀少年』とか『MONSTER』とか。『DEATH NOTE』もすごく好きでしたし、女子高校生が読んでいるというので『NANA―ナナ―』を読んだりもしました。

――人気作をしっかり押さえている印象ですね。

結城:そうですね。自分の場合、昔から一貫して、たとえば1人のコアな海外作家さんを全部読み通すようなタイプではなく、その時々に話題になって多くの人が面白いと言っているものを欠かさず読む、という読書傾向だったと思います。

――その頃はもう小説家になろうとは思っていなかったのでしょうか、それとも後々なろうと思っていたのか...。

結城:それでいうと後者ですね。高校時代にデビューしようとはまったく思わず、いつかなりたいし、なれるんじゃないかと胸の奥底でくすぶらせているタイプでした。
 やっぱり中学生3年生の時の卒業文集の経験が大きかったんです。ものすごく狭いコミュニティとはいえ、ただの中学3年生が書いたものがあれだけいろんな人を面白がらせたんだから、歳を重ねれば小説家になれるだろうと根拠なく思っていました。

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